2023年の映画

 今年はけっこう映画を見た。ただし、その要因は、長女の習い事で暇になってしまった次女を連れ出すためのものが多く、『アイカツ! 10th STORY 未来へのSTARWAY』、『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』、『仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐』(同時上映のキングオージャーのやつも見た)、『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦』、『映画プリキュアオールスターズF』、『映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ』と、ブログに感想を書かなかったものも多いです。

 このうち、大人も面白く見ることが出来るのではないかというのが『ドラえもん』と『すみっコぐらし』、ファンムービーとしてよくできているのが『アイカツ!』と『プリキュア』ですかね。

 

 もちろん、子ども向け以外の映画もそこそこ見れたので、一応、順位をつけて5本並べておきます。

 

『バービー』

 

 

 監督が『レディ・バード』と『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』のグレタ・ガーウィグということで期待して観に行ったんですが、期待通りに面白かったです。

 まず、いろいろと解釈したくなる映画ですが、そうした解釈なしでもキュートなマーゴット・ロビーと「ヒロイン力」満載のライアン・ゴズリングは素晴らしいですし、散りばめられているパロディも笑えます。単純に面白い映画だと言えるでしょう。

 グレタ・ガーウィグは今まで、「あるあるネタ」の調理が抜群にうまい作家だと思っていましたが、このように虚構で埋め尽くすような映画を撮っても上手いですね。

 バービーは女の子たちの憧れでもありますが、同時に「バービー」というイメージは、現実にはバービーほど完璧ではない女の子たちを抑圧する存在でもあります。

 バービー人形はさまざまな人種や体系などがつくられてはいますが、本作品は、こうしたバービーの二重性に自覚的で、そのあたりはさすがでした。

 

 

『TAR/ター』

 

 

 本作のサイコホラーっぽい演出とか、脚本とかにはいろいろと言いたいこともあって必ずしもベストの映画だとは言えないと思うのですが、それを補って余りあるケイト・ブランシェットの演技と存在感。 

 ケイト・ブランシェットはこの映画で「マエストロ」と呼ばれる現代のトップ指揮者を演じているわけですが、冒頭のトークショーのシーンから、まさにマエストロにふさわしい佇まいを見せています。

 その後にジュリアード音楽院の指揮者養成コースで、Wokeな若者をやり込めるシーンも完璧で、さすがとしか言いようがないです。

 

 

『キリエのうた』

 

 アイナ・ジ・エンドが主演で、そのバディ的な役として広瀬すずが出ているという情報を聞き、一種の青春音楽映画を想像しながら見に行ったら、かなりガッツリとした震災映画でもありました。

 上映時間が3時間近くある作品になっていますが、これは2つの作品を強引に1つにまとめたような作品だからです。

 そのため、映画としてはやや不格好なところもあるのですが、ラスト近くの青い花をもった広瀬すずが光の中に消えていきそうなシーンは、『スワロウテイル』の看板が釣り上げられていくシーンを思い出すようないいシーン。

 また、本作での東日本大震災へのこだわりとか、松村北斗の使い方とか、新海誠作品との共通点も感じました。

 

 

『ケイコ 目を澄ませて』

 

 

 まず主演の岸井ゆきのが素晴らしく良かったですね。

 本作で演じているのは聴覚障害者の女子プロボクサーという役で、手話も含めて寡黙ですし、とにかく身体で演じなければならないような役なのですが、それを見事にこなしてます。

 撮影前にボクシングのトレーニングをしたそうですが、このボクシングシーンも決まっていて、特にジムでトレーナーとボクシングのコンビネーションのルーチンを繰り返すシーンは素晴らしいです。

 ストーリー的にもう少しメリハリがあってもいいかもしれませんが、岸井ゆきの聴覚障害者の世界の描き方が非常によかったです。

 

 

『怪物』

 

 

 是枝裕和坂元裕二がタッグを組んだ作品。

 永山瑛太や田中裕子といった坂元裕二脚本のドラマにおなじみの面々が出ていることもありますが、ストーリーとしては坂元裕二色が強いものになっていると思います。

 リアルな描写から始まっていって、最終的には寓話的な形に持っていくスタイルも坂元裕二っぽいです。

 一方、大雨の中で泥だらけの車両の窓をふいて中を見ようとするシーンを内側から撮った画の美しさはさすが是枝裕和という感じでしたし、子どもの撮り方は相変わらず上手いです。

 ただ、ラストに関してはちょっと不満もあります。

 

 

 生成AIが話題になっている昨今ですが、今年の映画を振り返ってみるとやはり役者の存在感というのは大きいですね。

 『TAR/ター』にしろ、『ケイコ 目を澄ませて』にしろ、主役が平凡だったら成り立たなかった映画だと思います(マイナーな映画ですが『兎たちの暴走』のリー・ゲンシーもよかった]。逆に『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』はすごい画でしたけど、人がいないぶん、映画の核が弱かったような気もします。

 改めて「人間の魅力」の強さを感じた1年でもありました。