『屋根裏のラジャー』

 公開2週目にして、シネコンではけっこう小さめの劇場になってしまっていますが、同じスタジオポノックの前作『メアリと魔女の花』に比べると、かなりいいと思います。

 『メアリと魔女の花』の大きな欠点であった、魅力的な脇のキャラクター(特に人間以外)が皆無という問題に対して、今作ではピンクのカバの小雪ちゃんや骨っこガリガリ山田孝之が自部位声を出している猫のジンザンと、魅力的なキャラがいろいろといますし、アニメーションのクオリティは相変わらず高いです。

 

 キャラの絵はジブリのものよりも絵本っぽい陰影を感じさせる絵で、動かすのはけっこう大変だと思うのですが、最後までクオリティを落とさずにいっています。

 アニメ的にも冒頭の想像の世界からはじまり、現実世界の描写、イマジナリーの世界の描写、どれも平板にならずによくできていると思います。

 シナリオ的にも子どもと一緒に見ている親には響くシーンがあり、親にとっては「泣ける」映画でもあると思います。

 

 ただ、やや「親向け」というか、子どもが置いていかれている部分もありますね。例えば、「忘れない」とか「守る」とかいう文字は漢字じゃなくてひらがなで表記すべきだし(すごく重要なシーンだけど小1の子どもは読めなかった)、エンディングテーマも洋楽ではなくて日本語の歌にすべきでしょう。

 

 このあたりは子ども向けTVアニメからの叩き上げだった宮崎駿などの世代と、アニメを年長者も当たり前のように見るようになった世代の違いとも言えるかもしれません。

 脚本も何か大きな穴があるわけではないのですが、もうちょっと子どもに引っかかるような工夫ができたかもしれません。

 とは言っても、一緒に見に行った小1の娘もけっこう笑っていたので、子どもが見てつまらないということはないと思います。

 

 やはり、オリジナルキャラで家族揃って楽しめる映画というのはかなりハードルが高いのだと思います。

 これが『クレヨンしんちゃん』のようなキャラが立ちまくっている原作ものだと、ストーリーを「親向け」に調整しつつ、おなじみのキャラで子どもたちを笑わせるということができるのですが、オリジナルものはこの手が使えませんからね。

 

 でも、最初にも書いたように『メアリと魔女の花』よりも面白いと思いますし、クオリティも素晴らしいので興行的にも頑張ってもらいたいです。

 間違いなく親は泣ける映画だと思うので、子どもが興味を示しているならぜひおすすめします。