日本では『ハンバーガー殺人事件』というタイトルで翻訳されていたブローティガンの生前最後の小説が文庫化。ただし、改題されているものの訳者は同じ松本淳で、若き日に翻訳したものを今回新訳の形で刊行しています。
原題は「SO THE WIND WON'T BLOW IT ALL AWAY」なので、今回のタイトルのほうが原題にあっているわけですが、なぜ「ハンバーガー殺人事件」というタイトルが付けられたかというと、主人公がある事件をきっかけにハンバーガーに異常な執着を持つようになってしまったからです。
基本的には少年時代の回想が語られていく小説ですが、冒頭からハンバーガーにまつわる事件(悲劇)が起こったことが示唆されており、後半ではその真相が語られることになります。
というわけで、この小説はミステリー的でもあるのですが、そこはブローティガンなので、読みどころは文章をつらぬく、「やさしさ」と「かなしさ」です。
この小説では話の区切りで、
風が吹きはらってしまわないように
つちぼこり。アメリカに舞う⋯⋯つちぼこり
という文章が差し挟まれるのですが、ブローティガンが描くのは、放っておけばアメリカの中で消えてしまいそうな人々のエピソードです。
ブローティガンの小説は断片のようなものでは構成され、明確なストーリーがないものもありますが、この小説では後半の話の流れは悲劇へと収斂していきます。
そういった意味で、ブローティガンを初めて読む人にも読みやすい小説だと言えるでしょう。
そして、もちろんブローティガンが好きな人は、ブローティガンの世界を楽しめるはずです。
