2018年の紅白歌合戦を振り返る

 あけましておめでとうございます。

 今年も一回目の更新はもはや新年の儀式ともなっている紅白歌合戦の振り返りから。

 いろんなものを詰め込んできてそれなりに盛り上がった感のある去年の紅白ですが、想定される批判が2つあります。まず1つ目は「平成最後を謳いながら最後はサザン+北島三郎ユーミンとみんな昭和ではないか?」という批判であり、2つ目は「紅白歌合戦というフォーマットがもはや意味を成さないのでは?」というものです。

 1つ目の批判に関しては妥当と思わざるをえないのですが、その点については各歌手への短評の中などで触れたいと思います。

 2つ目の批判についても、今回の紅白を見ると、例えば「米津玄師のパフォーマンスを白の得点に入れて良いのか?」など審査を困難にする要素が多々あり、「歌合戦」という形式が成立しにくい番組構成だったことは確かだと思います。

 しかし、この「歌合戦」という形式が成立しにくい根本的な原因は、近年の白組の圧倒的な強さ、そしてそれを支えるジャニーズファンの存在にあります。紅白両陣営のパフォーマンスとは関係なく、白組の固定票が勝敗を左右しているのです。

 もちろん、「現代においてもはや男性と女性が2つに分かれて競い合うというフォーマットが時代遅れなのだ」という意見もあるのでしょう。しかし、まだまだ制度の改革によって「歌合戦」を救済する道は残っているはずです。その改革におけるボウリングのセンターピンは「お茶の間審査員の廃止」だと主張したいのですが、きちんと書くと以上に長くなるので止めます。

 司会に関しては、いろいろ危ういところもありながらまったく動じない広瀬すず。流石と思う反面、常にスリリングだった綾瀬はるかが懐かしく思えました。

 

 以下、各歌手の短評

 

天童よしみ→歌はほぼ覚えていないんですけど、筋肉体操とそれに参加する武田真治、さらに武田真治が体操の服でサックスを吹くという絵柄は強かった!

Suchmos→紅白に出たバンドとしてはサカナクション以来の音楽的な凝りようとおしゃれさだったけど、世間が求めるのは「タマシイレボリューション」的なものなんですよねきっと。

あいみょん→悪くないけど、思ったよりも早く王道路線に入ってきた感じ。もうちょっとエキセントリックな感じで行くのかと思ったけど。

YOSHIKI feat. HYDE→初めて聴きましたが、YOSHIKIHYDEが組んだ曲として想像したイメージズバリの曲。楽曲としてのV系の王道という感じ。

島津亜矢→もちろんうまいんだけど、演劇的な歌い方をして中島みゆきに勝てるわけはないので、もう少しフラットに歌ったほうがよい気がしました。

 

DA PUMP→去年は皆無だった待望の国民的ヒット!紅白にとってはまさに干天の慈雨というべきもので、まさに有難い存在だったのでは?

AKB48→指原卒業ということで「恋するフォーチュンクッキー」。すっかり現役感がなくなって、なんか懐メロ的存在になってきましたね。

欅坂46平手友梨奈が欠場。代わりの人は頑張ってましたけど、やはり平手友梨奈がいないとあのダンスは締まらないですね。

三山ひろし→バックのけん玉ばかりに注目が集まって今年も誰も歌は覚えていないと思う。そんな企画がよいのかという問題はあるけど、成功してよかった!

乃木坂46→AKBと違って現役感がある。時代は移り変わりますね。

EXILE→「RISING SUN」はそんな名曲なのか?という問がいつも頭に浮かびます。

三浦大知→先程は「U.S.A.」を褒めましたが、「U.S.A.」みたいのばっかだったら絶望的なわけで、そんな中で三浦大知のような先進的な試みができるアーティストがいることは良いこと。

aiko→「カブトムシ」を熱唱してくれましたが、これは平成の名曲ですね。

松田聖子→完全「昭和」モード。

椎名林檎宮本浩次宮本浩次の無茶苦茶なようで音程ははずさない歌いっぷりはさすが。ものすごいパワフルでやや椎名林檎がパワー不足に思えるほど。

松任谷由実→ファンが選んだのは「ひこうき雲」と「やさしさに包まれたなら」。こちらも「昭和」というか「ジブリ」か。ジブリ強し!「ひこうき雲」は声の伸び的にやや苦しかったか。

星野源→ここ3年で日本人の多くが知っている歌を2曲も送り出しているのは素直にすごい。平成の末期を代表しているといえるのかも。

米津玄師→この自らのパフォーマンスだけでなく、「打上花火」、「パプリカ」と3曲も楽曲を送り込んでいることを考えると、今年を代表するアーティストだったのではないかと。特にこの「Lemon」は歌詞もいいですし、パフォーマンスとしてもハイレベルだった。

MISIA→「アイノカタチ」を聴いているときは「Lemon」の後だったので「相変わらずつまらない歌詞を歌っているな」と思っていたのですが、「包み込むように」は良かったですね。排気量はやはりピカイチ。

ゆず→マイクなしパフォーマンスは和田アキ子には届かず…。

石川さゆり→「天城越え」と「津軽海峡冬景色」の無限ループにはまっていてどうにかならないものかと思う時もあるのですが、今回の布袋寅泰とのコラボはけっこう良かったと思う。

嵐→悪くはないけどSMAPがいなくなって以降、すごくオーソドックスになったと思う。

サザンオールスターズ→「勝手にシンドバッド」は文句なしに盛り上がれる。ユーミンとの絡みもあって番組的には最高のエンディングだったでしょう。ただ、この曲とこの取り合わせは「昭和」というか「プレイバック80年代」で、「平成最後」を連呼しながらこれなのか?という思いはちょっと残る。

 

 

 盛り上がった紅白ではあったけど、「平成最後の紅白」で本当にトリを飾るべきだったのはSMAPの「世界で一つだけの花」か安室奈美恵の「CAN YOU CELEBRATE?」。

 でも両者ともすでにいない…。

 そこで仕方なくの昭和回帰という気もしますが、まあ、三浦大知星野源や米津玄師を見ると時代は回帰するだけではなく、前にも進んでいるのだなと思います。