2018年の映画

 今年も立川のシネマシティ以外で見たのは1本のみ。『カメラを止めるな』も見ようと思いつつ、立川のシネマシティでやらなかったので結局見なかったという無精な状態でしたが、よかった映画を5本あげたいと思います。

 

1位 『レディ・バード

 傑作かと問われれば少し迷うところもあるのですが、自分が教員として関わってきた生徒たちの姿とシンクロするところもあって今年一番印象に残りました。

 主人公のレディ・バードカトリック系の私立高校に通う3年生。学校が男子部と女子部に分かれており、保守的な教育が行われています。そんな中でも、レディ・バードは、クリスティンという本名を嫌がり常に「レディ・バードです」と名乗るなど、ややエキセントリックで他の生徒とは違う何かを持ちながらも、決してクラスの中心ではない微妙な立ち位置の生徒です。

 そんなレディ・バードの高校3年生の1年間を描いた映画ですが、主人公の非凡な存在であるたいと思いつつ、平凡な価値観を捨て去るほどには突き抜けていない絡まり具合が絶妙です。

 

 

 

2位 『タクシー運転手 約束は海を越えて』

 1980年5月に、韓国・全羅南道の光州市を中心として起きた民衆蜂起である光州事件を、それを伝えようとしたドイツ人記者と、その記者を乗せて戒厳下の光州市まで運んだタクシー運転手を描いた作品。

 ノンポリだった主人公のタクシー運転手のマンソプが実際にデモや軍による弾圧を見て変わっていくのがこの映画の一つの見せ場であり、ソン・ガンホの演技の上手さが目立ちます。また、光州市の学生や、同業のタクシー運転手との交流もうまく描かれていますし、催涙弾→こん棒による殴打→実弾射撃とエスカレートしていく軍の狂気の描き方も上手いと思います。

 韓国の歴史を改めて考えさせる映画でもあります。

 

 

 

3位 『万引き家族

 実際にあった事件をモチーフにしつつ、それをややファンタジーっぽく描くというのは『誰も知らない』に通じるのですが、『誰も知らない』がほぼ「家族」の中だけで完結した話であるのに対して、この映画の後半では、その「家族」が社会と対峙します。  当然ながら、ファンタジー的な擬似家族は大きく揺り動かれさざるをえないのですが、それを描いたところが是枝裕和の新境地といえるかもしれません。

 終盤の「重さ」を引き受ける安藤サクラの演技は見事。そして、全体を通して松岡茉優の演技と表情が光っていると思います。

 

 

4位 『未来のミライ

 あまり評判は良くなかったですが、細田作品の中ならば『バケモノの子』よりも楽しめましたし、個人的には『サマーウォーズ』よりも好きです(『時をかける少女』と『おおかみこどもの雨と雪』には及びませんが)。  

 作品の内容としては、映画の途中に「子どもはいつのまにかひとりでなんでもできるようになる」みたいなセリフがありますが、その「いつのまにか」をファンタジーで埋めてみたようなものだったと思います。

 話のつくりしては『となりのトトロ』と似たところもありますが、「親の成長」を描こうとしたところがこの作品の特徴であり、評価の別れるところでしょう。

 でも、小さい子どもを持つ身としては非常に楽しめましたし、響きました。

 

 

5位 『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』

 原題は「Darkest Hour」、日本でのタイトルだとチャーチルの評伝のようですが、チャーチルの首相就任からダンケルクの撤退戦を成功に導くまでのきわめて短い期間を描いた映画になります(けっこうつくった部分もある感じですが)。

 映画の基本的な骨格となるのが、あくまでも戦い抜こうとするチャーチルとイタリアを通じてドイツとの講和を探るチェンバレンハリファックスという保守党の有力政治家の対立で、ここを演劇的ともいえる感じでつくっているのですが、そこが個人的には楽しめました。

 

 

 

 次点は『泣き虫しょったんの奇跡』。

 毎年書いているような気もしますが、来年はもう少し見る本数を増やしていきたいですね。