『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』

 『若草物語』は未読なのですが、2018年の個人的ベスト映画『レディ・バード』のグレタ・ガーウィグ監督+主演シアーシャ・ローナンということで見てきましたが、これも良い作品でしたね。

 舞台は南北戦争当時のアメリカ・マサチューセッツ。メグ、ジョー、リズ、エイミーの四姉妹を中心に家族のさまざまな出来事を描いた原作を、シアーシャ・ローナン演じるジョーが『若草物語』を書くまでというメタ的な視点で再構成し、さらに女性の自立と自由というテーマを中心に据えることで、原作を現代にぐっと引き寄せています。

 

 長女にエマ・ワトソン、マーチおばさんにメリル・ストリープをもってくるという豪華キャストで、それも女性映画として効いていると思います。

 特にメリル・ストリープに「私は金持ちだから自由に生きることができるけど、金持ちでない女は結婚しなければ生きていけない。女の職業なんて売春宿の経営か女優くらいしかない」といったことをいうシーンがあるのですけど、この言葉は150年近くたった今でも、それなりに効いている言葉と言えるでしょう。

 おそらく、本作はそうした「女性映画」として評価されるのだと思います。

 

 ただ、個人的にそれ以上に感心したのが、この監督の「あるある」的なシーンをつくる上手さ。『レディ・バード』もそうでしたが、ちょっとしたやりとりや、感情の動きを切り取ることが非常に巧みなんですよね。

 自分の家には小さな姉妹がいて、お互いに「〇〇って言って」と言い合って、自分の頭の中でこしらえたドラマを再現したがっていて、「一体これは何なんだろう?」と思っていましたが、この映画を見ると姉妹ってこうなんですね。

 他にも「妹に泣かされる姉」とか、「姉妹ってこれこれ」みたいなシーンが随所にあって、とても面白く見ることができました。

 『レディ・バード』はかつて教えた生徒を思い出しながら見ていましたが、この監督はキャラの「あるある」ではなく、感情の揺れ動きの「あるある」みたいのを見せてくれるんですよね。そこが大きな魅力だと思います。

 もちろん、これには役者の上手さあって、主演のシアーシャ・ローナンはもちろんうまいですし、母親役のローラ・ダーンもいいです。そして、四女のエイミーを演じたフローレンス・ピューも良かったですね。