『海街diary』

 是枝裕和の新作は吉田秋生のマンガを原作とした『海街diary』。
 吉田秋生はけっこう好きなのですが原作は未読。ただ、吉田秋生なので原作はしっかりとしているのでしょう。
 というわけで、それを是枝裕和がどう料理するのか?ということを楽しみにして見に行きましたが、非常に隙のない良い出来だったと思います。
 日本の映画の多くは、漫画や小説ならではのセリフや表現をそのまま映画に持ってきてしまう、下手なキャスト、やっつけなシーン(不自然な雨のシーンとか)、監督のひとりよがりの演出といったものでしらけさせてしまうことが多いのですが、そういったものがほぼない、極めて完成度の高い映画だったと思います。


 綾瀬はるか長澤まさみ夏帆広瀬すずの四姉妹もよく(特に広瀬すずのかわいらしさと綾瀬はるかの長女っぷりは良かったと思う)、脇も大竹しのぶ加瀬亮堤真一といった大物で固めて、さらにちょい役で鈴木亮平キムラ緑子という豪華さ。変な役者が入って場がしらけるというところがありません(この映画のリリー・フランキーの演技は個人的にはあまり好きではないですが)。
 また、子役をとるのが上手な監督だけあって、広瀬すずの周囲にいる中学生もいい感じで撮れています。また、広瀬すずはサッカーが上手いという設定なのですが、サッカーのシーンも気合が入っています(広瀬すずが上手い!)。
 シーンとしては船の上で花火を見るシーンの入り方が良かったですね。とても美しいシーンだったと思います。


 父と母が出て行ってしまった家に暮らす三姉妹が、父が出て行った後にも受けた娘とともに暮らすという話で、かなり複雑な関係性を描こうとしている作品なのですが、その関係性をゆったりとした時間の中で丁寧に描くことに成功しています。
 ただ、吉田秋生の原作だと、ひょっとしたらもう少し「きつい」というか「鋭い」ところもあるのかな?とは思いました。
 あと、観光客などを完全に排除した美しい鎌倉が撮れているので、「鎌倉幻想」のようなものをますますふくらませてしまうところが問題といえば問題かもしれません。