劉慈欣『三体Ⅱ 黒暗森林』

 『三体』の続編が上下巻で登場。今回は宇宙艦隊も登場し、話はますますスケールアップしていきます。

 前作では3つの太陽のある惑星系に住む三体人の存在が明かされ、その三体人が地球を狙って大艦隊を送り込むという展開になっていました。しかも三体人は智子という智恵のある粒子を地球に送り込み、地球のすべての情報を監視し、人類の科学技術の発展を阻害しています。

 智子の監視を逃れることができるのは人間の頭の中だけということで、人類は「これぞ」と思う4人の人類を面壁者に任命に、彼らに大きな権限を与えて三体人打倒の戦略を考えさせます。

 選ばれた面壁者は、元米国国防長官フレデリック・タイラー、前ベネズエラの大統領でアメリカの介入を跳ね返したこともあるマニュエル・レイ・ディアス、科学者のビル・ハインズ、そして前作の主人公とも言える葉文潔(イエ・ウェンジエ)から“宇宙社会学の公理”を託された羅輯(ルオ・ジー)。

 

 前作はVRゲームの「三体」で思う存分に荒唐無稽な世界を展開してくれましたが、今作の魅力の1つがこの面壁者の考える面壁計画。彼らは誰もが考えつかないような計画を期待されており、実際、かなりぶっ飛んだ計画です。

 そんな中で当然、今作の主人公の羅輯の計画が肝なわけですが、その羅輯の護衛につくのが前作で大活躍した史強(シー・チアン)です。やはりこのシリーズのスピード感を作り上げている要因の1つはこの史強ですね。

 

 また、本作の上手い点はコールドスリープを使って一気に未来に話を進めていく点です。三体人に対抗するには宇宙艦隊が必要なわけですが、それを一歩一歩つくり上げていったら、何巻あっても終わりません。ところが、この小説はそこをコールドスリープで一気に実現してみせ、主人公たちにハイテクを使わせることを可能にするのです。

 そしてコールドスリープをした冬眠者が未来世界でそれなりに尊重されるしくみというのもうまく考えてあります。

 

 個人的には、前作のシリアスな文革パートと、わけのわからないVRゲームと、漫画のようなナノテクの話のごった煮のほうがより面白く感じましたが、今回もとにかく読ませるし、ストレートにスケール感のあるSFになっている。完成度ではこちらのほうが上でしょう。

 とにかく、読み終えると「じゃあ第3部はどうなるの?」となる本で、第3部も本当に楽しみです。