ニクラス・ルーマン『マスメディアのリアリティ』を読了。
いろいろと忙しかったりして集中して読めなかった+難解なルーマン節の数々のため内容がきれいに頭には行ったわけではないですが、もとが講演ということもあって部分部分はけっこう印象に残りました。
まずは徹底的に主体を排除するその文体。例えば、次のモラルについての部分なんて鋭いですし、他の人はこんなふうには書きませんね。
モラルは自己の若返りのチャンスを得るために、あからさまにスキャンダラスなものを必要とする。つまり、それはマスメディアを、そしてとりわけテレビを必要とするのである。(119p)
さらにこの本が他のマスメディア研究と違う点は、ジャーナリズムとしてのマスメディアだけでなく、娯楽や広告についても分析している点。特に広告に関しての次の部分なんかは面白い。
広告は情報を操作しようと試みている。そしてその仕事は不誠実であり、そういうことを前提としていることが前提となっている。それはマスメディアの大罪を自らかぶって、あたかもその他すべての番組を救おうとしているかのようである。おそらくこれが、広告が手の内を明かしてプレーしている理由であろう。(70p)
他にもhttp://d.hatena.ne.jp/morningrain/20070717#p1で紹介したマスメディアの特質についての部分なんかについても興味深いです。
ルーマンの言うマスメディアのコードがインフォメーション/非インフォメーションである、という主張の正しさに関しては個人的に判断できない部分もありますけど、マスメディアを考える上で刺激的な論考だと思います。
マスメディアのリアリティ
ニクラス ルーマン Niklas Luhmann 林 香里
晩ご飯はマグロ丼とキュウリ