宮本浩次 / 宮本、独歩。

 けっこう前にNHKの「うたコン」で聴いた"冬の花"が良かったこともあってアルバムを買いましたが、やはりなかなかいいですね。

 このアルバムの魅力は何と言っても宮本浩次の歌唱力。エレファントカシマシ時代から良かったわけですけど、このソロアルバムではさまざまなジャンルに挑戦して、そしてすべてを歌いこなしている。

 そして、何と言ってもポテンシャルが圧倒的なんですよね。例えば、5曲目の"Do you remember?"、ギターに横山健が参加していて、いかにも一時期に流行ったパンクを思い出させる曲です。良い曲ではありますが、同時に平凡な曲でもあると思います。

 ところが、宮本浩次が歌えば、平凡な曲に迫力と起伏が出てくる。自動車教習所の周回コースであってもF1マシンが走れば「すげぇ」となるのでしょうが、そんな感じです。

 これはラストの"昇る太陽"にも言えることで、平凡な歌い手で歌えばきっと平凡に聴こえるのではないかという曲なのですが、高音をガンガン攻めていく歌い方は実にエモい。それでいて音程は外さないし、さすがです。

 

 4曲目の"きみに会いたい -Dance with you-"は高橋一生に書かれた曲らしく、曲の感じは今の高橋一生に合わせたものとなっています。ところが、やはりこれも雰囲気に頼らず、圧倒的歌唱力で歌いこなしてしまう感じでいいんですよね。

 6曲目の"獣ゆく細道"は椎名林檎との共演で、椎名林檎のアルバムですでに聴いている人も多いと思いますが、ここでもどんなに派手なアレンジをしても負けない宮本浩次の歌は際立ってますね。一方、東京スカパラダイスオーケストラの10曲目"明日以外すべて燃やせ"は、もうちょっとめちゃくちゃやっても良かったんじゃないかと思わなくもない。

 そして、2曲目の"冬の花"。今の演歌に足りないのはこういうエモいところだよなと思わせる曲で良い。「うたコン」のパフォーマンスは素晴らしかったと思うので、この曲でぜひ紅白に出てほしいところ。こういう歌もできるのであれば、森進一のカヴァーアルバムとかも出してほしいですね。

 


宮本浩次-Do you remember?