2017年の紅白歌合戦を振り返る

 あけましておめでとうございます。
 今年も一年の計は紅白の振り返りにありということで、まずは去年の紅白について。
 直前で安室奈美恵の登場が決まるまでまったく目玉のなかった今年の紅白。去年はヒット曲もほぼ皆無で番組的には苦しいところだったと思いますが、それならばとライブ>音源となる歌手、例えば竹原ピストルとか三浦大知とかX JAPANとかエレファントカシマシとかSuperflyとかをを揃えたラインナップは正解だったのではないかと思います。
 去年はこのブログの記事でも指摘したように、「SMAPの不在」という事態を中心にしてすべてが否定神学的に構築されたステージだったわけですが、今年はおそらくそうした否定神学的な構成に対して、「SMAPを呼べなかった失態を糊塗しているだけで、もっと今ここの存在を肯定すべき!」というニーチェ主義者からの批判の声が上がったのでしょう。今年はある種の「過剰さ」を追求するような構成だったと思います(欅坂46の「不協和音」が繰り返されたのはもちろん永劫回帰の現れ。詳しくは発表未定の論文「紅白的、あまりに紅白的〜あるいは回帰する欅坂46について」を参照)。
 司会に関しては、「LIFE」ネタが多くて「そんなのしらねーよ」という視聴者も多かったと思いますが、そういう場合は早めに二宮和也が引き取っていて全体的に安定していたのではないかと。去年、「歌ってないのでは?」という疑惑を指摘した有村架純も今年はちゃんと歌っていた感じでしたね。


 以下、各歌手の短評


三山ひろし→けん玉で早々に失敗が出て、みんな「あ!」となったので曲を覚えている人なんていないだろう。
竹原ピストル→うざそうなんだけどうざくない。すごく説教臭そうな歌詞なんだけどうざくならないのは歌い手としての上手さなんだと思います。
丘みどり→細かいテクニックをひとまず置いておいて全力で歌うという作戦がよかった。巧さはなかったけど若手演歌歌手の中ではエモいステージでした。
市川由紀乃→やはり若手(というか誰でも)に美空ひばりの歌を歌わせるのはどうなのか?美空ひばりは声量、音域、テクニックとすべてにおいて傑出しているので、上回れる部分というのがないんですよね。ちょっと厳しかったと思います。
SEKAI NO OWARI→『メアリと魔女の花』の主題歌。それなのにバックに『メアリと魔女の花』の映像が流れないのはなんでだろ?しかもこの曲が終わった後にアニメ100年と銘打って、コナンの映像をバックに倉木麻衣が歌ったのに『メアリと魔女の花』の映像が流れないのはなんでだろ?この曲自体はFukaseのボーカルの個性がよく出る曲でなかなかいいと思います。
三浦大知→これはカッコ良かった!昔から歌もダンスも上手いのは知ってたけど、こういう紅白のようなステージでも十分通用しますね。
欅坂46立憲民主党の枝野代表がカラオケで歌ったと聞いて、歌詞と枝野の姿がシンクロして味わい深かった。相変わらずファシズムっぽいんだけど。
福山雅治→だんだんと歌が説教じみてきている。一言で言えば「さだまさし化」。
松田聖子→声も出てなかったし、自作の曲もダメだったし、いいところなし。
平井堅→この曲のサビとか展開は良いと思うし平井堅の歌唱も良いと思うんだけど、歌詞が前半から単純で重い。もう少しうまい比喩なり何なりが使えていればさらに良いと思うんだけど…。
椎名林檎→歌い手としてのパワーでは後続のX JAPANなどには対抗できないので、そこでトータス松本を呼んでくる椎名林檎の作戦勝ち。
X JAPANYOSHIKIのドクターストップというのは、アンパンマンの顔が一度は濡れるか汚されるのと同じような様式美なんだけど、それでも「来た来た!」となるところが偉大。
AKB48→近年は毎回ごちゃごちゃしていてどうでもいい感じのAKB48のステージだったけど、今年は「渡辺麻友の花道」というまとまりがあって良かったんではないでしょうか。ただ、渡辺麻友が卒業するとAKB48というグループはなくなってAKB48というシステムだけが残る感じではありますよね。
エレファントカシマシ→「今宵の月のように」はやはり良い曲なのだと再確認。曲の緩急が心地よい。
松たか子→曲自体はすごく平凡だと思うのですが、松たか子が歌うと何か立派なことを歌っているように感じる松たか子マジック。
Superfly→もともとすごいパワーがるのは知ってたけど、今回は押し一本じゃなくてやや抑えて入ってサビは圧巻の迫力。今回のMVPなんじゃないでしょうか?
嵐→一時期はかなり凝ったステージで「最先端」ということを意識していた嵐だけど、今回は非常にオーソドックス。SMAPがいなくなって差異化の必要がなくなったということなのですかね。
安室奈美恵→中継だしそんなにライブ感を感じさせないステージでしたけど、でないと去年の「SMAPを待ちながら」になってしまうので、出ることが重要なんでしょうね。さすがの説得力はありますし。
石川さゆり→1番のアレンジには賛否両論あるでしょうが、毎年、「津軽海峡冬景色」ち「天城越え」の無限ループですから、本人もちょっとは趣向を変えたくなるでしょう。本人の歌唱はさすが。ただ、1番のバックのピアノの入れ方はあんまり好きじゃない。
ゆず→北川悠仁はあまり好きではないのですが、岩沢がいますからね。「北川さんが急病のため、急遽、岩沢さんが1人で歌います」とかいう展開を期待しているくらいに岩沢の高音の伸びは良いと思います。



 勝敗的には松たか子、Superfly、石川さゆりがいた紅組の勝利で良かったと思いますが、去年の疑惑の判定の後だと紅組を勝たせにくいですよね。審査員の投票もオープンにするスタイルでしたし、白の勝利は仕方がない。今回、審査員がステージ上にいましたけど、あれは高橋一生を映し続けるためなのか?あれは審査員に余計なプレッシャーがかかって良くないと思う。