今年も映画を見たのはほぼ立川のシネマシティ。というわけで「2017年の映画」というよりも、「2017年に立川のシネマシティでやっていた映画」というタイトルのほうがふさわしいかもしれませんが、とりあえず今年の5本を。
1位 『ダンケルク』
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クリストファー・ノーラン初の本格的な戦争映画。ノーランの作品だけあって、単純な戦争映画ではなく、陸での1週間と海での1日そして空での1時間が違った時間軸で同時進行しつつ、最後に一つに重なっていくという構成になっています(『インセプション』がそんな映画でした)。
そういう複雑な構成も面白いのですが、なんといっても冒頭のビーチのシーンが良い。一面の白い砂と撤退の船に乗るために列をなす兵士たちの黒い線。そこにサイレンのような音を立ててドイツ軍の急降下爆撃機が襲い掛かる。スケール感のある画面で、この作戦の規模や兵士たちの焦燥と絶望を印象づけています。デヴィッド・リーンとかキューブリックを思わせる画でした。
2位 『ベイビー・ドライバー』
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まずは音楽とカーチェイスのシンクロの見事さ。カーチェイスというのは今までのアクション映画でさんざんやり尽くされてますが、この映画では音楽をうまく使うことで、今までにないような気持ちよさをつくり出しています。
前半は、音楽に沿ったシーンのつくりや、長回し、そして現代を舞台にしながらどこかしらレトロな雰囲気を漂わせる画面づくりは、『ラ・ラ・ランド』あたりを思い出しましたが、後半はやや血生臭くなってタランティーノの映画を思い出します。最後までノリを落とすことなく、鮮やかに走り抜けるような映画です。
ケヴィン・スペイシーがいかにもケヴィン・スペイシーな役柄ででてるのですが、こういうケヴィン・スペイシーを見るのもこれで最後になるんですかね…。
3位 『お嬢さん』
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『オールド・ボーイ』や『親切なクムジャさん』のパク・チャヌク監督の作品。サラ・ウォーターズの小説『荊の城』を原案にし、舞台をヴィクトリア朝のイギリスから日本統治下の朝鮮に移したサスペンスになります。
日韓併合のドサクサのなかで財をなし、日本人と結婚して日本人のように振る舞う主人公の秀子の叔父がつくり上げるキッチュな日本的エログロ世界。その中でひときわ輝く魅力を見せる秀子を演じるキム・ミニ。さらに中盤以降の鮮やかな話の折り返しと、パク・チャヌクらしさが詰まった作品ですね。
4位 『メッセージ』
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テッド・チャン「あなたの人生の物語」の映画化作品。「あなたの人生の物語」は近年屈指のSF中編、というかSFに限らずとも中短編でこれだけの作品はめったにないというそういうクラスの作品だと思うのですが、それだけに映画を見る前には不安もありました。
しかし、その不安を見事に払拭してくれました。特にSF的ガジェットの描き方は非常に秀逸で、ある日突然現れる宇宙船らしき物体、そこに乗っているヘプタポッドと彼らの発する音や彼らの描く文字、これらが非常に見事に描かれています。
フィルマーの最小時間の定理など、物理学的な説明をバッサリと削ったことでラストがややシャマラン映画のようになってしまった感もありますが、丁寧にそして美しくつくられたSF映画でした。
5位 『ラ・ラ・ランド』
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アルバムにおいて冒頭とラストの曲が良いと、それだけで繰り返し聴く気になるということがありますが、この『ラ・ラ・ランド』もそんな印象。中盤のストーリーはありきたりですし、予告で良さそうだったプラネタリウムのシーンなどもそれほど鮮やかではありませんでした。けれども、何と言っても冒頭の高速道路とエマ・ストーンらが通りを踊りながら歩く冒頭のミュージカルシーン、そしてラストの盛り上がりが中盤の平板さをかき消しますね。
そして、テーマソングの高揚感!このテーマソングの気持ちよさは近年でも屈指のものだと思います。
次点は『ハクソー・リッジ』あたりですかね。去年はけっこう邦画を選んだのですが、今年はそんなに引っかかる邦画がなくてすべて洋画になりました。
秋ごろはバタバタしていて『ドリーム』と『散歩する侵略者』を見ようと心に決めていたのに見逃しました。そしてアン・リーの『ビリー・リンの永遠の一日』が公開されなかったのはなぜだ?