A・J・ライアン『レッドリバー・セブン:ワン・ミッション』

 前回紹介した『バベル』と同じく古沢嘉通が訳しているSFですが、同じSFでもその趣きはずいぶん違います。

 『バベル』が歴史改変小説で舞台もアジアからイギリスまでの地理的に広い範囲でしたが、本書『レッドリバー・セブン:ワン・ミッション』は、途中まではそれほど大きくないボートの中で話が展開します。

 

 主人公は発砲音と悲鳴で目を覚ましますが、自分の記憶を失っており、名前などもわからない状況です。

 腕には「ハクスリー」とのタトゥーがあり、頭を触ると手術されたような跡があります。そして、主人公の聞いた発砲音で死んだと思われる男には「コンラッド」とのタトゥーがありました。

 その後、ボートにはリース、ゴールディング、プラス、ディキンソン、ピンチョンという5名の男女がいることが判明しますが、いずれも記憶を失っており、頭には手術されたような跡がありました。

 記憶を消されたうえ、何らかの理由によって、7人の男女がボートに乗せられたと思われるのです(コンラッドはすでに死亡済みですが)。

 

 ボートは自動操縦されており、主人公たちは自分たちが何者なにかも、このミッションが何なのかもわからないままに船に乗り続けます。

 ただし、それぞれの職業的な記憶は残っており、ハクスリーは刑事または警察官、ピンチョンは軍人、リースは物理学者といった具合です。また、そのスキルも残っており、例えばピンチョンはさまざまな武器を使いこなします。

 

 基本的に前知識なしで読んだほうが面白いと思うので、ストーリーをこれ以上説明するのはやめますが、読み終えた感想としては思ったよりもミステリ要素は弱めでアクション的な要素が強めということ。

 きっと映画化すればいい原作になるのではないかと思いますし、ひょっとしたらゲーム化もできるかもしれません。

 世界観の深さ的なものは思ったよりはないのですが(そこは『バベル』と対照的)、面白く読める小説であることは確かです。