三崎亜記『となり町戦争』

 前から少し気になっていたんですが、ブックオフで見つけたので読んでみました。
 となり町との間で進められる目に見えない奇妙な戦争を描いた小説です。その奇妙な戦争の様子が非常によく書けています。
 例えば、となり町の広報誌に書かれた「さあ、終戦だ!新しい町づくりを!」という言葉とか、住民への説明会、そして外注される戦闘とか、ある種の戯画でもあり、同時に何かしら真実を含んでいるような設定は面白いですね。
 ただ、人物の造形とかはやや弱いですし、基本的に「戦争」についての主人公の思いを書きすぎのような気がします。
 海外での戦争経験があるという主任のキャラが上手く書けていないにが一つの原因でしょうかね?(ちなみにこの主任の考えは『ザ・ワールド・イズ・マイン』の飯島あたりに影響受けているのかな?)
 あと、香西さんの上司の室長とかをもうちょっとちゃんとしたキャラにしてもよかったのかもしれません。全体的にきちんとした人物として描かれている人が非常に少ない小説です。
 ただ、アイディアは面白いと思うので、ひょっとしてこの作者は奇想短編のようなものを書いたら面白いのかな?


となり町戦争 (集英社文庫)
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