Beirut/The Rip Tide

 2ndアルバムの「The Flying Club Cup」、2枚組EPの「March Of The Zapotec and Realpeople Holland」と買い続けているBeirutの3rdアルバム。前々から簡単には説明できないポテンシャルを秘めたバンドだと思っていましたが、今作ではその不思議な魅力がますます発揮されてます。
 Beirutはアメリカ出身のシンガソングライターであるザック・コンドンを中心としたプロジェクトで、デビュー当初は「バルカン・フォーク」などと形容されていました。「バルカンフォークってなんだ?」という感じですが、聴いてみれば何となく納得。トランペットなどの金管楽器が哀愁を持って響くその様子は東欧あたりの民族音楽や、あるいはジプシーの音楽なんかを思い起こさせます。(東欧の民族音楽とジプシーの音楽の違いとか関係は知らないですけどね)
 ところが前作の2枚組EPの1枚「Realpeople Holland」はほとんどエレクトロニカ。Beirut独自のメロディと声がエレクトロニカの世界で展開されていたのです。


 で、それを受けての3rdアルバム。
 表立ってエレクトロニカな曲は減り、基本的にはホーンが目立ついかにもBeirut的な世界。
 が、そんな中でも一番印象にのこるのがアルバムの表題曲でもある6曲目の"The Rip Tide"。電子音で刻まれるリズムにゆったりとしたホーンが絡み、哀愁を帯びた歌が始まるこの曲はまさにここ最近Beirutが取り組んできたことの集大成。派手さは全然無いですが、これはいいです。
 そしてこの曲を聴くと、他の曲も「バルカンフォーク」というようなフォークソングでは全然なく、どっちかというとエレクトロニカ的な設計で作られているように感じられてくる。
 歌メロ中心に作られているんじゃなくて、さまざまな楽器によってつくり上げられたパーツが、リズムの上に乗っている感じなんですよね。
 まあ、素人があれこれ言ってもポイントをついているかどうか分からないので、とりあえず"The Rip Tide"をどうぞ。



Rip Tide
Beirut
B0059IVV9M