『キャプテン・フィリップス』

 上のランキングでも触れましたが、いい映画でした。
 前半のシージャックのシーンでは、ソマリア人の海賊はそれこそモーターボートみたいな船で巨大な貨物船に乗り込もうとするのですが、「どうやって乗り込むのか?」、「それに対して貨物船側にはどんな対抗手段があるのか?」といった、実際に見てみないとわからないことをきちんと見せています。
 そういったリアリティを積み重ねていくことによって、派手なシーンはなくとも緊迫感を持たせていくのがポール・グリーングラスの上手さですね。これは後半の米軍による救出作戦の描写にも言えて、「米軍はこういうことを想定した訓練をやり込んでいるんだな」って思えます。
 そして、この映画の良さは何と言っても後味の悪さ。主人公を演じるのがトム・ハンクスなんで、「家族思いのトム・ハンクスが家族を信じて生きる!」みたいな映画にも出来たと思いますし、実際、そうした要素はあるんですけど、ポール・グリーングラスはそこを大幅に切って、現実の後味の悪さを観客に突きつけます。イギリス人監督ならではのラストの切り方だったと思います。