今年は本数的には去年、一昨年よりも見たような印象だけど、そのうち3本が『終戦のエンペラー』、『ウルヴァリン: SAMURAI』、『47RONIN』という「ハリウッドが描く変な日本」を期待して見に行ったようなもので(『終戦のエンペラー』はまともでしたけど)、そのぶん重要な映画を見落としているんでしょう。また、評判の高い『ゼロ・グラビティ』も年内は見れずに終わりました。
1位 『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』
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『かぐや姫の物語』とどちらが1位か迷いましたが、「トラと漂流した227日」というありえないような話を最後に見事に着地させてみた「物語の力」という点でこちらを上にしました。
見る前は「動物もの」「サバイバルもの」のような映画化と思っていましたが、さすがアン・リーだけあってそんな単純な映画は撮らない。この映画で描かれているのは、物語が生み出される力であり、人びとが物語を必要とする意味です。そして、もちろんアン・リーが撮る画も素晴らしいです。
2位 『かぐや姫の物語』
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物語はみんな知っている竹取物語ですし、監督・高畑勲のメッセージも宮崎駿の『風立ちぬ』に比べると明解。物語という点ではそれほど驚くべきものはありません。けれども、そのアニメの表現は圧巻。例えば、赤ちゃんのシーン。かぐや姫は一度赤ちゃんに戻って育っていくのですが、通常の人間よりも圧倒的に速い速度で成長していきます。そしてこの映画では、それを変な説明は抜きにして赤ちゃんの動きだけで見せていきます。寝返り、ずりばい、ハイハイ、立つ、歩く、といった赤ちゃんが大体1年位はかかって徐々にできていくところを、この映画では1シーンで見せます。時間が異常に圧縮されているシーンなのですが、それをなんとも伸びやかな作画で見せます。高畑勲という才能が、宮崎駿がつくりあげたジブリのブランドと資金力を思う存分費やして生み出した破格のアニメですね。
DVDはまだなんでリンクは関連書籍。
3位 『地獄でなぜ悪い』
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バカで悪趣味なんだけど、面白い!
冒頭の♪全力歯ぎしりレッツゴー♪の歌から、『桐島、部活やめるってよ』の映画部を煮詰めてバカさとテンションだけを取り出したような映画製作集団「ファック・ボンバーズ」、そして必要以上に血が吹き出すヤクザの抗争と、B級というか、なんかのパロディでしかありえないような映画の出だしなんだけど、それが長谷川博己の異常なまでのハイテンションとともに、ものすごい「高み」に到達する映画。二階堂ふみの存在感と色っぽさも際立っています。
4位 『風立ちぬ』
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今までの宮崎駿の作品に比べて「傑作!」というものではないと思いますが、宮崎駿が自己の中にある「ファシズムとの親和性」に向き合ったいい作品だと思いました。いろいろと批判も聞きましたが、個人的には、ラストの主人公・堀越二郎の「一機も戻ってきませんでした」というセリフには重みがありますし、そのセリフに重みを持たせるように映画全体が作られていると思います。
5位 『キャプテン・フィリップス』
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今日見てきたのですけど、「さすがポール・グリーングラス」と思わせる映画。2009年に発生した「マースク・アラバマ号」乗っ取り事件でソマリア海賊の人質となったリチャード・フィリップスを描いた映画なのですが、変な感動ものに仕上げずに、ひたすら「その時に何が起こったのか?」かという姿勢で事件を追っている。また、ラストの後味の悪さも特筆すべきもの。いくらでも後味の良いラストを追加することは出来たと思うのですが、あそこで切ったところにポール・グリーングラスの批評性のようなものを感じます。
時点は是枝裕和の『そして父になる』。あと、映画としては変な映画なのですが強烈な印象を残したのがポール・トーマス・アンダーソンの『ザ・マスター』ですかね。