『ブリッジ・オブ・スパイ』

アメリカとソ連の冷戦のさなか、保険関連の敏腕弁護士ドノヴァン(トム・ハンクス)は、ソ連のスパイであるアベルマーク・ライランス)の弁護を引き受ける。その後ドノヴァンの弁護により、アベルは死刑を免れ懲役刑となった。5年後、アメリカがソ連に送り込んだ偵察機が撃墜され、乗組員が捕獲される。ジェームズは、CIAから自分が弁護したアベルアメリカ人乗組員のパワーズ(オースティン・ストウェル)の交換という任務を任され……。

 これがヤフー映画のページ載っているあらすじ。
 監督がスピルバーグで主演がトム・ハンクスという「いかにも」な組み合わせで、しかもそのトム・ハンクスが弁護士を演じるとなると、「アメリカの「良心」を描く感動大作!」的なイメージが浮かんでくると思います。
 実際、冷戦さなか、周囲を敵に回してソ連のスパイであるアベルを「憲法」や「権利」という言葉を使って擁護するトム・ハンクスの姿は、まさにアメリカの「良心」であって、冒頭のスパイの追跡シーンなど良いシーンはあるものの、前半はあくまでもイメージ通りの映画です。


 ところが、後半、お互いのスパイ(パワーズは捕虜といったほうがいいのかな)交換のために、トム・ハンクスが東ベルリンに乗り込んでからは、わけのわからないソ連東ドイツという社会主義国家を相手にする不安定さにさらされることになります。
 「建前」を重んじつつもあっさりと「実利」を取りに来る大国のソ連アメリカやソ連に比べれて弱小国だからゆえに最後まで「建前」にこだわる東ドイツ、そして、「実利」一辺倒とも言えるCIA。
 この三者の関係の中で、トム・ハンクスはなんとかして「良心」を発揮しようとするわけです。


 脚本にコーエン兄弟が加わったことで、最近のスピルバーグ作品にしてはユーモアを感じさせるやりとりが多かったのもこの作品の特徴。
 そしてやはりスピルバーグらしく上手いシーンも多いです。特に建設されたばかりのベルリンの壁を乗り越えようとした人々が電車の中から見えるシーンの「一瞬の暴力」の撮り方なんかはさすがです。他にも東ベルリンとか、館内を自転車が走る東ドイツの庁舎の様子とか興味深く見れました。
 「さすがスピルバーグ」という映画で楽しめましたね。