Slow Club/Complete Surrender

 前作「Paradise」が素晴らしかったイギリスのインディーポップデュオ・Slow Clubの3rdアルバム。
 オールディーズの「フェイク」といった感じの曲がつづくアルバムなんだけどこれがよい!
 椎名林檎に"17"という曲があります。完全にCarpentersの「フェイク」なんだけど、「フェイク」でも本家に負けないような熱量があって個人的には大好きな曲です(まあ、Carpenters自体もオールディーズの「フェイク」的な部分があるわけですが)。
 で、このSlow Clubの「Complete Surrender」もオールディーズの「フェイク」でありながら、本家に負けない熱量がありますし、細かいアレンジなどを凝ることによってたんなる焼き直しにならない楽曲になっている。


 そして、正直女性ボーカルのRebeccaがこんなに歌えるとは思っていなかった!
 いい声しているし伸びもいいとは思っていましたが、"Suffering You, Suffering Me"や"Not Mine To Love"、"The Queen's Nose"あたりは貫禄さえ感じさせる歌いっぷり。1stあたりをチラッと聴いただけで、これらの曲を聴けば、誰かR&Bの実力派ボーカルをゲストに迎えたと思ってしまうのではないでしょうか?
 今までのSlow Clubというと、その軽快なメロディやパーカッションの上手い使い方、絶妙な曲の崩し方とかが魅力的だったわけですが、この3rdアルバムは何と言ってもRebeccaのボーカル。


 ただ、アレンジの巧さというのも光っていて、5曲目の"The Pieces"でのホーンやコーラスの使い方、8曲目の"Complete Surrender"のドラムやコーラス、ストリングスの入れ方などのセンスは光ります。"Complete Surrender"のコーラスなんかは昔にもあったものなのでしょうけど、それをSlow Clubならではの軽快な感じにアレンジしてあります。


 前作、前々作とはまったくちがう印象のアルバムなのですが、Slow Clubの変わらぬ魅力というのも十分に出ているアルバムだと思います。
 アルバム全体としては最後のアコースティックバージョンがいらなかったんじゃないか?("Not Mine To Love"と"Wanderer Wandering"のアコースティックバージョンを収録)というくらいで、文句なしに良いアルバムだと思います。



Complete.. -Deluxe-
Slow Club
B00J5XVIE0