5枚しか選べなかった去年に比べると、当たりのアルバムを引き当てることができた1年。ただ、相変わらず聞いている枚数はしょぼいので、10枚は選べず、今年は8枚で行きたいと思います。
1位 Michael Kiwanuka/Love & Hate
Love & Hate Michael Kiwanuka Interscope Records 2016-06-02 by G-Tools |
ウガンダにルーツを持つイギリスのソウル・シンガーの2ndアルバムですが、これは良かったですね。
黒人のソウルというと歌声はいいのですが、その歌に頼りすぎてしまってトラックがやや退屈ということが多く、個人的にそれほど聴いていないジャンルでした。しかし、もともとMichael Kiwanukaがセッション・ギタリストとしても活動していたということもあって、このアルバムはトラックが非常に凝っていて飽きさせません。
特にアルバムタイトルにもなっている"Love & Hate"はコーラスから始まって、歌が入り、後半はエレキギターが入ってストリングスも絡んでくる。これは傑作だと思います。個人的に今年のNo.1ソングです。
2位 Daughter/Not To Disappear
not to disapper daughter begga 2016-01-14 by G-Tools |
1stも良かったですが、そこからさらに大きな成長を見せてくれたのがDaughter。1stよりも2ndのほうがよいというロックバンドは意外と少ないものですが、このDaughterは新境地を見せてくれました。
特によいのがギターで、開き直ったようなギターが多い中で、非常に緻密でかつ新しさを感じさせるギターが鳴っています。
冒頭の"New Ways"では、ボーカルの主旋律の裏で鳴り響くギターのもう一つの旋律が聞き所になっていますし、7曲目の"No Care"の前のめりに進んでいくリズムとギターもいい感じです。
3位 ふくろうず/だって、あたしたちエバーグリーン
だって、あたしたちエバーグリーン ふくろうず 徳間ジャパンコミュニケーションズ 2016-07-12 by G-Tools |
偏愛の対象。
ふくろうず、レーベル移籍後の第一弾アルバム。ミニアルバムをたくさん出しているので、何枚目と言いにくいのですが、フルアルバムだと3枚目。全体としての印象はやや「サブカルっぽさ」が薄れて、けっこうまっとうなポップソング、ラブソングが増えてきた感じで、ふくろうずのメロディの良さがストレートに出た作品なんではないかと思います。
そして、8曲目の"春の王国"のラストの内田万里のボーカル♪北極の雪解け シロクマの涙 会いに行くよ♪のエモさは最高ですね。邦楽なら今年No.1ソングです。
4位 Syrup16g/darc
darc syrup16g DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT 2016-11-15 by G-Tools |
8曲入り37分という短めの1枚ですが、曲数が減ったぶん最近の「Hurt」や「syrup16g」よりもアルバム全体に緊張感があって良いんではないでしょうか。
「「COPY」を今、作ろう」という気持ちで制作されたということで、音は比較的ザラザラとしていて確かに初期のシロップを思い起こさせます。3曲目の"I'll be there"の♪生き急いだような景色を/選んでみせたかったけど/君が側にいないのを/誤魔化してきただけなんだよ♪の部分のメロディと歌詞、そして五十嵐の声の絡まり合いは何とも絶品ですね。必殺技というべきものだと思います。
Fantôme 宇多田ヒカル Universal Music =music= 2016-09-27 by G-Tools |
エヴァに喩えて言うならば、「アスカのように鮮烈な印象でデビューした宇多田ヒカルが、いつの間にかミサトさんも飛び越えて碇ユイになっていた」という感じ。
先行シングルの"花束を君に"などからも、今回のアルバムが母・藤圭子の死に強い影響を受けたものだということは予想できたのですが、それ以上の「境地」のようなものに到達していると思います。
椎名林檎、小袋成彬、KOHHといったアーティストとコラボしているところも特徴で、ネットなどの感想でもこの3曲の評判はいいですが、確かにこの3曲だけ「現世の欲望」が歌われている感じで、普通の人の感情とシンクロする歌になっていると思います。
逆にいうと、他の曲は「無常感」という言葉がぴったりな曲が続きます。ラストの"桜流し"なんかは、「無常感」以外の何物でもないですよね。
個人的には、その「無常感」は好きですが。
6位 Travis/Everything At Once
Everything At Once Travis Carol 2016-04-28 by G-Tools |
Travis、3年ぶり10枚目のアルバム。写真を見ればわかるようにジャケがすごくダサいので、同じくジャケのダサかった「Ode To J. Smith」みたいな出来では?と心配しましたが、これは悪くないです。
10曲収録ですが、アルバムトータルタイムは34分ほど。3分前後の短い曲が並んでいます。それでいてメロディはなかなかいいものが揃ってるのですから、アルバム1枚が気持ちよくさらっと聴けます。
Travisも、もはやベテラン、大御所と言ってもいい存在かもしれませんが、他のベテランバンドがどうしても音をゴテゴテとさせていく中で、このあっさりさはいいですね。「アコースティックにこだわって歌本来の魅力を云々」とかではなくて、本当にあっさりとしているのです。
7位 Slow Club/One Day All Of This Won't Matter Anymore
ONE DAY ALL OF THIS WON'T MATTER ANY MORE SLOW CLUB MOSHI MOSHI 2016-08-18 by G-Tools |
1st、2nd、3rdと路線を変えながら良いアルバムを出し続けてきたSlow Club。特に2nd、3rdは傑作で、個人的には10年代前半で最も評価するバンドですが、今作はやや足踏み。悪くはないですが、3rd路線延長で、3rdを上回る出来ではないです。
それでも、女性ボーカルRebeccaは相変わらず良いですし、8曲目の"Rebecca Casanova"のように今後に期待させる曲もあります。期待ほどではなかったですけど、Slow Clubの良さは出ています。
8位 Whitney/Light Upon the Lake
Light Upon the Lake Whitney Secretly Canadian 2016-06-02 by G-Tools |
アメリカ・シカゴ出身の7人組バンドで。まず特徴はやや甲高い男性ボーカル。ネットでRhyeを思い起こさせるという感想も目にしましたが、そこまでではないにしろこの声の高さはやや好き嫌いがわかれるかもしれません。
音としてはローファイでややサイケデリックな感じもある、インディー色の強いものなのですけど、特筆すべきはトランペットの使い方のうまさ。曲の間、ずっと入っているわけではないのですが、非常に良いアクセントになっています。全体的にセンスを感じさせますし、アルバムが短いのもいいです。