去年よりもいろいろと良いアルバムが聴けたような気がする今年ですが、世間の流行などからはずれていくばかり。他とはほとんど被らないような10枚ではないかと思います。ちなみに下半期の注目作だったTV On The Radioの新譜はAmazonから年内の到着せず…。
1位 Slow Club/Complete Surrender
Complete.. -Deluxe- Slow Club Imports 2014-07-14 by G-Tools |
2ndアルバム「Paradise」が素晴らしかったイギリスのインディーポップデュオ・Slow Clubの新作。オールディーズの「フェイク」といった感じの曲がつづくアルバムなんだけどこれがよい!女性ボーカルのRebeccaがこんなに歌えるとは思っていませんでしたし、たんなる焼き直しにとどまらない熱量と、Slow Clubなりの再解釈がある。
ほとんど注目を浴びてはいませんが、このSlow Clubは10年代を代表するポップバンドなのではないかと。
2位 ふくろうず/マジックモーメント
マジックモーメント ふくろうず ERJ 2014-06-17 by G-Tools |
なんだかんだいって一番聴いたのはこのアルバムかと。ふくろうず、ずっと推し続けていますけどいまいちブレイクしないですね…。
ふくろうずの良さはフェイクとしての「エモさ」。フェイクとしての「エモさ」という点では椎名林檎とちょっと通じる部分があると思うんですけど、椎名林檎が先鋭的なサウンドでアングラ的な空間を完璧に構成しているのいたいして、ふくろうずの音がつくり出す空間はぜんぜんしょぼいし、ペラペラ。でも、だからこそ、そこにリアルが宿るということがあるのだと思います。
3位 田中茉裕/I'm Here
I’m Here 田中茉裕 ユニバーサル ミュージック 2014-11-11 by G-Tools |
ふくろうずがフェイクとしての「エモ」だとしたら、こちらは本当の「エモ」。
ボーナストラックであるラストの"ゆるして"のデモバージョンは、歌い方がエモいとかそういうレベルではなくて、もはやビーストモード的。ここまで歌い手のエネルギーを感じさせる歌唱も滅多にないと思います。
高校の時につくったミニアルバム「小さなリンジー」以来、体調不良などで休養していた田中茉裕でしたが、ここに復活。"ゆるして"のデモバージョンに関してはあまりの激しさに今後が不安になるほどですが、"夕焼け色の風"は、一気に広い場所に出たようなそんな開放感を感じさせる曲になっていますし、激しさだけではない成長を見せています。注目の才能です。
4位 Stars/No One Is Lost
No One Is Lost Stars Imports 2014-11-03 by G-Tools |
Stars、7枚目のアルバム。前作の「The North」がややいまいちだったので、さすがにStarsも下降線か…と思ったのですが、今作は持ち直しました。いいアルバムです。
今までのアルバムに比べると全体的にアレンジは抑えめなのですが、TorquilとAmyの声をうまく使ってポップに仕上げてありますし、新しいアイディアもあります。
やっぱりStarsが好きだし、まだまだ期待できるってことを再確認させてくれたアルバムですね。
5位 Lacrosse/Are You Thinking Of Me Every Minute Of Every Day?
Are You Thinking of Me Every Minute of Every Day Lacrosse Tapete Records 2014-02-03 by G-Tools |
スウェーデンの6人組インディー・ポップバンドLacrosseの3rdアルバム。前2作に比べると今回はややダークな部分も見せているアルバムで、一時期のロックバンドの変化を語る用語借りるなら「Radiohead化した」感じなのですが、それでもポップさは失われず、アルバム全体としてはLacrosseの中でも一番いいかもしれません。特に9曲目の"This Is Not A War, No Winners No Losers"は名曲。
6位 Damien Rice/My Favourite Faded Fantasy
My Favourite Faded Fantasy Damien Rice Warner Bros / Wea 2014-11-10 by G-Tools |
アイルランドのシンガーソングライターDamien Riceの3rdアルバム。なんと前作「9」からは8年ぶりということで活動しているかどうかも知らなかったんですけど、久々に来ました。しかもプロデューサーはリック・ルービンというメジャーどころ。
けれども、歲月は過ぎても売れっ子プロデューサーがついてもDamien RiceはDamien Rice。さすがに40歳を過ぎたので声のハリとかは落ちたかもしれませんが、あの声とその声が持つスケール感はあのまま。そして、8年ぶりのアルバムということで捨て曲がない。曲のメロディとかは前作よりもいいんじゃないでしょうか。
7位 SOHN/Tremors
Tremors SOHN Hostess Entertainment 2014-04-07 by G-Tools |
ロンドン出身、現在はオーストリアを中心に活動をしているアーティストSOHN(ソンと読むそうです)のデビュー・アルバム。RhyeやLana Del Reyなど近頃人気のアーティストのプロデュースやリミックスなどを手がけている人物で、このソロアルバムも非常に「今っぽい」音になっています。当然のようにダンスミュージック的なリズムを使いこなしつつ、踊りまくるわけでもなくあくまでもクールにきめてくる。ちょっとトム・ヨークを思い起こさせるところもありますけど、こちらのほうが少し軽い。重苦しくなりそうなところに、いかにも通俗的なフレーズをぶつけたりして重すぎにならないように計算している感じです。
8位 Syrup16g/Hurt
Hurt syrup16g DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT 2014-08-26 by G-Tools |
2008年に解散していたSyrup16gがすったもんだのあげくに復活!ずっと五十嵐隆の復活を待っていたわけですが、まさかメンバーそのままのSyrup16gで帰ってくるとは思いませんでしたな。しかも6年も経って。
冒頭のイントロがまたかっこよく("Sonic Disorder"あたりを筆頭にSyrupのイントロは素晴らしいのが多い)、サビは「謝罪!謝罪!」の連呼(本当は曲のタイトルでもある「Share the light」って言ってるんですが)、さすがの五十嵐もファンに悪いと思っているのかなと、最初聴いたときは涙腺が緩みました(うそ)。
前半の曲、特に歌詞がやや弱い気もするのですが、後半の"生きているよりもマシさ"、"宇宙遊泳"、"旅立ちの歌"で大満足。
9位 Ed Sheeran/Multiply (X)
Multiply (X) Ed Sheeran Atlantic 2014-06-24 by G-Tools |
イギリスの1991年生まれのシンガーソングライターの2ndアルバム。イギリスからは定期的にアコギ中心のシンガーソングライターが出てきますが、このEd Sheeranのアルバムの売りはプロデューサーがリック・ルービンやファレル・ウィリアムスだということ。ラップ、ヒップホップの要素を取り入れつつ、バラエティ豊かな曲を聴かせてくれます。あと、単純に声がいいというのもある。冒頭の"One"なんかは何の変哲もないバラードですが歌い手の良さが出ています。
10位 Blondfire/Young Heart
Young Heart Blondfire Tender Tender Rush 2014-02-10 by G-Tools |
ロサンゼルス出身、Erica DriscollとBruce Driscollの兄妹によるインディー・ポップバンド。ちょっと一時期のStarsを思いおこさせるようなエレポップで、全体的にメロディがよく、また、Ericaの女性ボーカルの声がかわいく、それでいて表情豊かで飽きさせないです。
「これ!」という曲がないのは欠点ですが、アルバム全体のレベルは高く今後を期待したいバンド。