The National/I Am Easy To Find

 前作「Sleep Well Beast」が素晴らしかったThe Nationalのニューアルバム。前作はここ20年ほどのロックの到達点といった感じで、複雑なドラムと緻密で切れのあるギターが融合した傑作でした。グラミー賞も受賞しましたし、少なくともインディー・ロックの世界では頂点に立ったといってもいいでしょう。

 「頂点」と書いたように、ここまでレベルの高いものをつくると次はどうするんだ? となりますが、今回はさらに緻密な曲を用意すると同時に、多くの女性ボーカルをゲストに迎えることで、もはや変える余地のないほど高度化したギターとドラムではなく、「ボーカル」の部分を変えてきました。また、インストの曲が途中に挟み込まれているのも今までのアルバムとは違う点です。

 まあ、このあたりは賛否の分かれるところでしょう。

 

 まずは冒頭の"You Had Your Soul With You"、これは今まで以上に緻密な曲で、特に冒頭のギターとかはライブで再現できるのか? と思うほど。ただし、かっこいい曲であることでは間違いなく、本アルバムの中でも最も良い曲かと。

 4曲目の"Oblivions"はいかにもThe Nationalっぽい曲ですが、女性ボーカルとしてMina Tindleがゲストに迎えられており、変化をつけてきています。

 5曲目の"The Pull Of You"も女性ボーカルをゲストに迎えていますが、この曲や後半の曲でゲストとして歌っているLisa HanniganはDamien Riceと一緒に歌っていた人ですね。Matt Berningerのボーカルもドラマチックに盛り上がっています。

 7曲目の"I Am Easy To Find"もいかにもThe Nationalっぽい曲で女性ボーカルを入れてきている"The Pull Of You"と似たパターンの曲。こちらのゲストはKate Stablesで、落ち着いた感じに仕上がっています。

 9曲目の"Where Is Her Head"がこのアルバムの中盤の聴きどころでしょうか。切迫感のあるドラムにMatt BerningerとゲストボーカルのEve Owenの声が絡んでいって盛り上がります。

  あと、後半で良いのは14曲目の"Rylan"あたりでしょうか。

 

 16曲入りと曲数も多く、後半はやや弱い気もします。また、やはり女性ボーカルが入ったことで変化はあるのですが、前作のように新しい境地に到達した感じはないですね。あくまでも今までの骨組みに変化をつけてきた感じです。

 というわけで、前作には及ばず解いたところですが、それは前作があまりにもハイレベルだったことの裏返しでもあり、本作も年間の上位に入ってくる出来だとは思います。

 


The National - 'You Had Your Soul With You' (Official Audio)