ケリー・リンク『スペシャリストの帽子』読了

 古賀誠安倍晋三の支持に回ったって話だけど、ほんとヘタレだ古賀誠は。郵政民営化のときも反対派を焚き付けながら自らは棄権で生き残り、さらに人権擁護法案のに「政治生命をかける」みたいに言っていたはずなのに、その反対派の中心人物の安倍晋三にすり寄る始末。まさにコウモリ男。

 ケリー・リンクスペシャリストの帽子』を読了。『インディアナインディアナ』のあとがきで柴田元幸が絶賛していたので、『インディアナインディアナ』を買うのをやめて読んだんだけど、確かにこれは面白い。
 ケリー・リンクは1969年生まれのアメリカ人女性作家。この本は著者の唯一の本で短編集なんだけど、すべてが一筋縄では行かない作品ばかり。表題作の「スペシャリストの帽子」は世界幻想文学大賞を、童話「雪の女王」を下敷きにした「雪の女王と旅して」はジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞を、2人のルイーズとその前に現れた奇妙な幽霊についての話である「ルイーズのゴースト」はネビュラ賞を受賞していて、ファンタジーとかSFの方面で評価されているんだけど、いわゆるファンタジーとも少し違う。
 ミルハウザーなんかにも似ている気がするけど、ミルハウザーが緻密な描写を積み重ねて行くことで幻想的な世界を描いているのに対して、ケリー・リンクは最初っからちょっと違う世界を見ている。柴田元幸バーセルミと似ているって書いていて、それもわからなくはないけど、バーセルミみたいに断片的な文章を書くわけでもない。
この感じは<未来の文学>とか「奇想シリーズ」とかの作家に似ているんじゃないでしょうか?アヴラム・デイヴィッドスンとかディッシュとかそのあたりを思い出しますね。あと、ほとんどしゃべらない少女、ジェニー・ローズが消えてしまう「人間消滅」なんかは、ドノーソの「夜のガスパール」を思い出しましたね。
 ただ、そういった作家がかなり理知的に奇想天外な世界を描き出しているのに対して、ケリー・リンクの印象は非常にナチュラル。基本的に「生と死の狭間の世界」のようなものを描いた作品が多いのですが、それが「作者にはほんとに見えてるんじゃないか?」と思わせるような感じで描かれています。「登場人物が実は死んでいた」という映画やお話はけっこうありますが、この作品では生きているのか死んでいるのかわからないような人たちが至る所に登場し、その謎が放置されたままに話が進んで行きます。
 また、語り手の設定や、語りの展開も独特。女性作家で、ここまで「私」が消えている作家もめずらしいんじゃないでしょうか?
 とにかく面白い本ですし、幽霊の使い方とかは村上春樹にも通じるものがあるんで、村上春樹好きとかにもいけると思います。

スペシャリストの帽子
ケリー リンク Kelly Link 金子 ゆき子
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晩ご飯は野菜炒めと冷奴