『ボヘミアン・ラプソディー』

 現在大ヒット中の、イギリスのバンド・クイーンを描いた映画。

 バンドを描いた映画というと、だいたい才能を秘めた冴えない若者が出会って成功→成功に溺れて乱痴気騒ぎの中で自分を見失う→仲間割れ→復活、といった展開をたどるのですが、この映画もそう。展開はいたって平凡です。

 例えば、イーストウッドの『ジャージー・ボーイズ』にあるようなバンドの人間関係を鋭く描くような視線はありませんし、『ストレイト・アウタ・コンプトン』に見られるような現実の社会問題とのリンクもあまりありません。

 ペルシャ系インド人の家に生まれたというフレディ・マーキュリーのルーツや、フレディのセクシャリティエイズの問題などは社会問題と絡めて描ける要素ではありますが、それほど深くは突き詰められていない感じです。

 

 けれども、そうした欠点を補って余りあるのが、フレディ・マーキュリーを演じたラミ・マレックの熱演とクイーンの楽曲の良さ。

 ラム・マレックはフレディ・マーキュリーにそっくりというわけではないのですが、人とは違ったエキセントリックな個性のようなものを非常にうまく表現していたと思います。

 また、楽曲はやはり強い。映画の中で数々の名曲が流れるわけですが、最後のライブ・エイドのシーンで、まだ「ウィー・アー・ザ・チャンピオン」が残ってた!

 さらにはエンドロールで「ドント・ストップ・ミー・ナウ」が流れるわけで、その楽曲の良さと層の暑さはすごいですね。

 そして、ライブ・エイドのシーンはやはり盛り上がります。下手なアクション映画では描けないようなスペクタクルになっているといえるでしょう。