長谷川等伯展

 今日は上野で長谷川等伯展見てきました。
 今回の特別展のキャッチフレーズは「絵師の正体を見た。」なんだけど、まさにそれがぴったりの内容。 
 長谷川等伯と言うと教科書に載っている教科書にも載っている水墨画の「松林図屏風」が有名ですけど、今回の特別展を見ると、それだけじゃないってことがわかる、松林図屏風を見る目も変わる。

 
 長谷川等伯は、もともと能登で仏絵をかいていた人で、そのころの絵はすごく緻密に描けてて上手い。
 「仏涅槃図」における動物の描き方とかは伊藤若冲なんかを思い起こさせるほどで、毛並みとか細かい部分に筆が行き届いてます。
 その後、等伯は34歳で京都に出て消息不明に。
 で、50歳超えてからまた作品を残し始める。このころまでに水墨画とか狩野派の絵とかを勉強したらしく、細かい書き込みと写実、そして大胆な構図を兼ね備えた絵を描くようになってる。
 「牧馬図屏風」は野生の馬を追う男たちを描いた作品で、緻密さは後退しているものの、馬と人、どちらにも「動き」があってダイナミック。
 「松に秋草図屏風」とかは近くで見るとうるさいほど描きこんでるのに、遠くから見ると構図がばっちり。
 金屏風の画面をこれほど埋める人も珍しい気がするけど、それでいて遠くから見ると明確な構図がある。
 そして、水墨画ではたんに大胆なだけではなく、大胆さと緻密さを併せ持ったものを見せてくれる。
 人を描く時も服はダイナミックに荒々しい線で描きながら、顔は繊細で丸みを帯びた線で描き出す。そんな自在な描き方が楽しいです。「竹林猿候図屏風」の猿とかかわいすぎですし、「竹虎図屏風」の虎なんかもユーモラス。
 

 で、ラストにでーんと「松林図屏風」。
 すべての技巧を極めた絵師が「あえて描かない」凄み。
 天才の技がハマったというよりは、絵というものを研究した果てに描かれた究極の一品という感じです。


 長谷川等伯の作品がこれほど一カ所で見れる事はもうなかなかないと思うので、絵に興味ある人はぜひ。