Facebookの創始者マーク・ザッカーバーグとその誕生のいきさつをデヴィッド・フィンチャーが描いた映画。
非常に期待させる組み合わせですが、よくできた脚本と相まって、ものすごい情報量を2時間に圧縮しつつ、グイグイ引っ張る映画になっていると想う。
成功によって何かを見失った男が仲間を失い孤独になるって映画はよくあって、この映画も良く似たストーリー展開を持った映画だけど、違うところは最初っから主人公が何かを失った男だというところ。
ガールフレンド相手にKYな発言を連発して振られるザッカーバーグ。そこから特に反省するでもなく、ある意味でKYな的な態度を突き詰めていってそのまま成功してしまうのが、この映画とギーク的とも言える文化の特徴。
ザッカーバーグの相棒で、より常識を持ったエドゥアルド・サヴェリン。普通の映画だと、このエドゥアルドの忠告を無視して主人公が破滅するところですが、その忠告を無視して成功するのが今までの「お話」との違いでしょう。
ただ、だからといってこの映画に出てくるザッカーバーグは怪物的な天才というわけではない。ナップスターの創始者のショーン・パーカーのパラノイアじみた語りにすっかりイカれてしまったり、弁護士を交えた席ではふてくされてみせたり、彼女には未練たらたら。フィンチャーの描くザッカーバーグはかなり未成熟な人間です。
もっとも、そんな未成熟な人間だからこそネットの世界を次々と塗り替えていくことができるんだ、ということも同時に伝えているような映画です。
またFacebookを生み出したハーバートの環境、鼻持ちならないエリートたちの集団も非常にうまく描いています。
学長のラリー・サマーズの描き方も、彼のことをちょっとでも知っている人はクスっと来るでしょう。
映像はフィンチャーにしてはオーソドックスですし、何か飛び抜けたアイディアのようなものもありません。ただ、オーソドックスなサクセスストーリーから微妙にずれたところを、非常にうまくまとめている気がします。
アカデミー賞向きではないと思いますが、「今」の空気をうまく切り取った、あるいはうまく捏造してみせた映画だと思います。