『英国王のスピーチ』

 すごい久々の映画。実は映画館で見たのは『ソーシャル・ネットワーク』以来だったりする。
 遅ればせながら見てきましたけど、アカデミー賞が『ソーシャル・ネットワーク』ではなくてこちらだというのには納得。いかにもアカデミー賞が好きそうなネタですし、脚本、俳優がしっかりしていて万人が楽しめる出来になっている。
 実話をもとにしたお話というのはいかにドラマに仕立てるかがポイントなんですけど、この映画の主人公ジョージ6世は、この映画に描かれていたように父から虐待に近い教育を受けた影響で吃音になり、しかも兄の許されぬ恋のとばっちりでなりたくもない王位が回ってきてしまうという、まさにドラマ満載の人生。そしてこのジョージ6世コリン・ファースをうまく演じています。
 さらに現在の女王である娘のエリザベスやチャーチル首相なんかも登場して、ドラマに花を添えています。


 というわけでうまく出来ている映画なのですが、ラストが参戦にあたって国民を鼓舞するためのスピーチで、それに国民が熱狂してエンディングというのは、「ナチス=絶対悪」という図式があってこそ。もし、正当性が問われるような戦争であれば、こういうふうには終われないですよね。
 飯田道子『ナチスと映画』という本で、戦後のハリウッド映画においてナチスが「わかりやすい敵」という記号性とともに登場することを指摘していましたが、この映画の成功を影で支えているのは、そういう「わかりやすい敵」としてのナチスの存在でもあると思いました。


ナチスと映画―ヒトラーとナチスはどう描かれてきたか (中公新書)
飯田 道子
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