Loney, Dear/Hall Music

 ここ最近もっとも評価しているアーティストの一人であるLoney, Dearのニューアルバムが登場。
  2006年のアルバムSologneでその独特の声と曲調に惹かれ、2007年のLoney,Noirではその曲構成の才能に舌を巻き、2009年のDear Johnではエレクトロニカ的要素を取り入れつつダークな世界を展開。そして今回のニューアルバムなんですが、完全にシンガーソングライターという範疇をはみ出した世界になっています。
 以前、このLoney, Dearについて、「音大の作曲学科を出たような作曲能力を持ったやつが、ラテン音楽っぽいリズム感なんかも吸収しつつ、トム・ヨークっぽいファルセットで歌う」と評したことがありましたが、その作曲家の才能がさらに発展。ほぼオーケストラの曲を聴いているような感じでアルバムは進みます。


 前々からうまかった楽器の使い方はさらに進化。4曲目の"Calm down"の後半に入るヴィブラフォンの美しさなんかはすばらしいもので、クラシックな雰囲気にジャズ的な要素を持ち込んで独特の世界を創り上げています。
 "Durmoll"の弦楽器と金管楽器で盛り上げていく感じもカッコイイですし、ラストの"What have I become?"のコーラスの絡みなんかも美しいです。
 今回のアルバムはとにかく音の構成とか楽器の使い方を楽しむようなアルバムになっていますね。


 ただ、これだけオーケストラを使ったり、さまざまな楽器を使って見せながらすべての曲が4分以内。ここまでくれば交響曲だって作れそうですし、プログレ風に次々と曲調を変えていくような曲も作れると思います。実際、同じようにいろいろな楽器を使ってみせるSufjan Stevensなんかはどんどん曲が長くなっている感がありますからね。
 ただ、この曲の短さというところでLoney, Dearはポップスの世界に踏みとどまっているのかなという気もします。初めてLoney, Dearを聴くなら「Loney, Noir」か「Dear John」をお薦めしましますが、今回もLoney, Dearならではの世界を堪能できる作品です。



Hall Music
Dear Loney
B005FYCFGI