アヴラム・デイヴィッドスン『どんがらがん』読了

 アヴラム・デイヴィッドスン『どんがらがん』を読了。アメリカ探偵クラブ賞、ヒューゴー賞世界幻想文学大賞というミステリー、SF、ファンタジーの3ジャンルで短編部門の賞を獲ったという奇才の短編集。
 例えば,シオドア・スタージョンと似ているところもあるけど(この本に収められている「さもなくば海は牡蠣でいっぱいに」はスタージョンの『夢見る宝石』とアイディアは同じ。)、あそこまで幻想的ではないぶん引き出しはデイヴィッドスンが広い。トマス・M・ディッシュに似ている短編もあるけど(「ナポリ」とか)、もうちょっとドタバタ感があってユーモラス。「そして赤い薔薇一輪を忘れずに」なんかはボルヘス的だけど、ボルヘスよりも単純に楽しめる。「尾をつながれた王族」あたりはジーン・ウルフをちょっと思い出すし、「さあ、みんなで眠ろう」なんかのヒューマニズムは感覚的には手塚治虫に近い。
 最後に収められている一番長い表題作「どんがらがん」が一番面白くないので、やっぱり短編の人だとは思うのですが、短編作家としてはアイディアといい、語り口といい、さすがに見事です。

どんがらがん
アヴラム・デイヴィッドスン 殊能 将之
4309621872


晩ご飯はおでん