『電波利権』を読んで思う、ライブドア事件の一断面

 昨日、池田信夫の『電波利権』を読み終わったんだけど、この本を読むとこの本の帯に書いてある「日本最大の既得権益集団はテレビ局である」ってことがわかる。電波という既得権益を手放さず、携帯や無線LAN、ネットと放送の融合を阻害するテレビ局はまさに「抵抗勢力」と言っていいようなもの。
 それで思うのは、今回のライブドア事件でのホリエモンについて、新聞やテレビは「拝金主義の象徴」とか「アメリカ流社会の生み出したもの」みたいに取り上げているけど、ホリエモンの体現した「アンチ・マスメディア」という側面が見事にスルーされていると思う。
 プロ野球の参入騒動からニッポン放送をめぐるフジテレビとの対決まで、ネットを中心にホリエモンを擁護する声が強かったけど、それはホリエモンを人間的に尊敬しているとか言うもんじゃなくて、ナベツネやフジテレビ首脳といったマスメディアの中心人物がホリエモンを毛嫌いしていたからというのが大きいでしょう。
 つまり、ナベツネホリエモンと同じ立場になる、あるいはフジの日枝会長がホリエモンに頭を下げる、日ごろ「アンチ・マスメディア」の立場を取っている人々に取って、これ以上痛快なことはないでしょう。ホリエモンが品位のない人物であればあるほど、マスメディアに対して「ざまーみろ」という思いが強くなるはずです(こう考えるとTBSを狙った楽天三木谷社長がそれほど支持を受けなかったのもわかる。三木谷社長はふつうの実業家みたいなイメージですから)。
 バブル崩壊のときに、銀行が潰れたら大変なのにもかかわらず、何となく溜飲を下げたのと同じように(2ちゃんねるの株板で、みずほ銀行を「だめぽ」とか呼んで破綻を期待するような書き込みとかはすごかったですから)、ライブドアがちゃんとした企業とは思えないけど、そうした企業によってマスメディアがめちゃくちゃにされたら面白いな、という思いが人々の中にあったんでしょう。
 そう考えると、「抵抗勢力としてのマスメディア」というイメージがなくならない限り、ホリエモンのようにマスメディアの権威に楯突いてヒーロー?になるという人物はこれからも出てくるかも。そして、そういう人物をマスメディアが視聴率が取れる限りもてはやすってのも、考えてみれば面白いというか滑稽な構造なんだと思う。

電波利権
池田 信夫
4106101505


晩ご飯はステーキとトマト