チャットモンチー/YOU MORE

 一言で印象を言うなら、「まるでメジャーデビューをひかえたバンドのインディーズ時代最後のアルバムみたい」。
 一応、チャットモンチーにとってはメジャーデビュー以降4枚目のアルバムになるのですが、完成度的にはたぶん一番低い。
 全曲セルフプロデュースということで、いしわたり淳治が作り上げていたと思われるちょっとトリッキーな展開やポップさは後退。シングルっぽい曲も減りました。
 ただ、ダメなアルバムかというとそんなことはなくて、個人的にはけっこう好き。
 

 たいていバンドは2ndアルバムあたりでデビューまでのストックを使い果たして、3rdアルバムあたりから迷走が始まります。エレクトにかを入れたりストリングスを入れたり、「〜風」な曲を作ったりして何とか変化をつけようとするわけです。で、その手のへんかはだいたいうまくいきません。
 チャットモンチーの3rdアルバム「告白」も、ちょっとその気があって、正直、これからが心配なアルバムでした。
 特に女性アーティストというのは周囲にのせられて自分の体力以上に突っ走ってしまうことが多く、あまりに短い期間に才能を使い果たしてしまうケースも多いですから、チャットモンチーもそのあたりが心配でした。


 そういった中でリリースされた今回のアルバムなのですが、変化しようとしたというよりは、いろいろな部分をそぎ落として、バンドの最初にあったであろうと思われる姿に戻ったような感じ。もっともチャットモンチーのインディーズ時代というのは知らないので、最初の頃とはぜんぜん違うのかもしれませんが、今までプロデューサーの力などで上げ底されていた部分、あるいは無理していた部分、周囲に合わせていた部分、そういったものが消えた感じです。
 

 ただ、じゃあたんにもとに戻っただけかというと、例えば"Last Kiss"のギターなんかは今までになかった感じで、ちょっと拙いデスキャブみたいですし、全体的にアメリカのインディーズバンドを思わせるようなものがあります。
 そして1stのころにあってエモっぽさが戻ってきたのも個人的には嬉しい感じ。ラスト2曲、"拳銃"、"余韻"はともに橋本絵莉子の作詞作曲なんですけど、ともに橋本絵莉子のエモいボーカルが堪能できる。特に"余韻"はロリ声→エモという変化も楽しめます。
 楽曲がシンプルになったぶん、橋本絵莉子の声や歌がよりストレートに伝わってくるので、彼女の声や歌が好きな人にはオススメ。今までチャットモンチーにまったく興味がなかった人も、新しいバンドのデビューアルバムだと思って聴いてみるといいかもしれません。 


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チャットモンチー
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