チャットモンチーの橋本絵莉子とPeople In The Boxの波多野裕文によるデュオ。橋下絵莉子が「自分以外の人の作った曲を歌いたい」という思いからスタートした企画のようです。
基本的に橋本絵莉子の歌詞に波多野裕文が曲をつけるという形で楽曲は作成されているらしく、3曲めの「幸男」だけが波多野裕文メインのボーカルで、他は橋本絵莉子。あと楽器は橋本絵莉子がドラムを担当し、他の楽器は波多野裕文がやっているようです。
People In The Boxの曲はほとんど聞いたことがないのですが、波多野裕文のつくる曲はシンプルで「柔らかい」感じで、チャットモンチーの曲とはけっこう違う感じです。
CINRA.NETというサイトに載っている橋本絵莉子と波多野裕文のインタビューで、橋本絵莉子が次のように述べています。
橋本:自分で作ってない分、メロディーの行き先が急に見えなくなるときがあって。というのも、自分の曲はメロディーの起伏が大きいんですけど、波多野くんの曲はそれが小さいんです。
―歌い方もいつもとは少し違いますよね?
橋本:アコギの指弾きの曲が多いんですけど、それに対して今までどおりのフルパワーの声で歌うと強すぎたので、今回はほぼ座って歌いました。あとは、自分が書いた歌詞もわりと柔らかいというか、アルファベットで言うと「小文字」みたいな雰囲気だったから、それも相まって、こういう歌い方になったのかなって。
https://www.cinra.net/interview/201706-hashimotohatano?page=2 より
この「メロディーの起伏」というのが1つのポイントかもしれません。
例えば、次の"トークトーク"。
おそらくチャットモンチーだったらもっと後半に向かって上げっていくようなメロディーがついたのではないでしょうか?
盛り上がったところから、さらに橋本絵莉子のボーカルの力で盛り上がるというのがチャットモンチーの魅力なのですが、このアルバムにはそういった強引とも言える展開はありません。
ですから、最初に聴いた時はやや物足りなく感じました。橋本絵莉子のパワーが70%くらいしか発揮されていないように思ったからです。
ところが、聴いていくとこれも悪くない。やや柔らかめのメロディーになったことで、橋本絵莉子のやや不思議な詞の世界が、これはこれでよく伝わるようになっています。
全体的にややソフトすぎる印象もありますが、ラストの"臨時ダイヤ"が楽しい曲なので、アルバムトータルの印象はメリハリがついています。
橋本絵莉子が好きならやはり聴くべきアルバムですね。