『ジャージー・ボーイズ』

 遅ればせながら見てきましたが素直に良かった。
 クリント・イーストウッドの作品なのでハズレはないだろうと思ってはいましたが、さすがの出来。
 1960年代に大ヒットを飛ばしたフォー・シーズンズ(知らない人も居るかもしれませんが、このバンドのリードボーカルフランキー・ヴァリの代表作が「君の瞳に恋してる(Can't Take My Eyes Off You)」です)の誕生から、スターの座を駆け上がり、バンドが崩壊し、再びフランキーがソロとして新たな一歩を踏み出すまでを描いています。
 もともと、ブロードウェイのミュージカルとして大成功した作品を映画化したということで、もっと「ミュージカル」的な映画かとも思ったのですが、いかにもミュージカル的なシーンはラストくらいなもので、歌は基本的にバンドの演奏シーンに組み込まれています。ミュージカルの原作の方も非常に優れたものらしいのですが、ミュージカルの方を見ていないと、「ミュージカルの映画化」というイメージは湧かないかもしれません。


 主人公のフランキーは床屋の見習いでありながら素晴らしい美声の持ち主、それを音楽と窃盗などの悪事の世界に引きこむのがトミー、そしてトミーの友人でいかにも悪ガキのトミーよりは落ち着きのあるニック。
 トミーとニックは刑務所に出たり入ったりの生活でしたが、彼らは素晴らしい作曲センスのあるボブと出会い、4人で音楽の世界で成功することを目指します。
 そして1961年に「シェリー」でヒットをとばしチャートに1位を獲得すると、「恋はヤセがまん(Big Girls Don't Cry)」、「恋のハリキリ・ボーイ(Walk Like a Man)」などのヒットを連発します。
 こうしてスターになった彼らでしたが、ニュージャージーのチンピラ上がりのトミーは莫大な借金を作り、またツアーの連続でフランキーと彼の家族の間にも溝ができます。
 そしてバンドは空中分解していくわけですが、このあたりの描き方が非常に上手い。トミーどうしようもなくもチンピラ的な愛嬌のあるトミー、ビジネスライクなボブ、一番地味なポジションに安住できないニック、その間で揺れるフランキーと、この4人の関係性の描き出し方が上手いです。


 そして、バンドの空中分解から、家族の不幸などを乗り越えての「君の瞳に恋してる(Can't Take My Eyes Off You)」。この演奏シーンは素直に感動しますね。
 もともとの曲も大好きなのですが(椎名林檎のカバーも好きです)、改めて素晴らしい曲であることを再確認。「ディスコの定番」といったものではなく、スケール感を感じさせる演奏になっています。


 『ミリオンダラー・ベイビー』や『グラン・トリノ』のような「いかにもイーストウッド」的な感じはないのですが、そういったものを感じさせないというのも、さらなる成熟ということなのでしょうか。
 

ジャージー・ボーイズ オリジナル・サウンドトラック
ボブ・ゴーディオ サントラ ジョン・ロイド・ヤング カイリー・レイ フランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズ フランキー・ヴァリ エリック・バーゲン
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