前作に引き続き、監督がサム・メンデスということもあって、全体的に映像は素晴らしい。
冒頭のメキシコシティの「死者の日」の情景から、ビルの屋上をボンドが走るシーンの撮り方とか本当にワクワクさせるし、ローマでのカーチェイスもなかなかのもの。そして、ラストの橋の上でのボンドとヒロイン、マドレーヌの撮り方なんかも非常にかっこいい。
映像としては文句無しの出来で、アクションも楽しめると思います。
ただ、ストーリーとしては、「スペクター」という悪の結社のリアリティーとか、「スペクター」のボスのボンドとの因縁とか、やはりやや苦しい物があるのも事実。
ダニエル・クレイグの007シリーズは基本的にリアリティ路線なのですが、それと「スペクター」という組織や、あっさりと破壊されるスペクターの秘密基地とかが、やや噛み合っていない気もします。
これは007シリーズ云々というよりも現代を舞台にスパイ映画を作るときの難しさであって、冷戦期はいくらひどく描いてもノープロブレムなソ連という素敵な悪役がいましたけど、今はそういった存在が無いですからね。
これだけグローバル化が進んで映画も全世界で公開されるようになると、例えば、ロシアとか中国を悪役にする映画はつくれないのでしょう。ISはボンドというよりもランボーの管轄のような気がしますし…。
ラストを見ると、ダニエル・クレイグのシリーズも一段落なのかもしれませんが、今後、007シリーズが続くかどうかは、組織やボンドの内部ではなく外部に敵を設定できるかどうかにかかっているのかもしれませんね。