『きみの色』

 最近流行りのバンドものですが、登場人物3人をギター、ベース、ドラムではなく、ギター、キーボード×2という編成(キーボードの一人のルイはテルミンなどの他の楽器もやる)にしているのがまずは正解。

 始めたばかりの素人がギター、ベース、ドラムのスリーピース編成で聞かせる演奏をするというのはよほどの天才でない限り難しいと思うのですが、リズムを電子ドラムに任せることで、そのあたりをうまく処理している。

 

 そして、最後のライブシーンでは3曲披露するのですが、そのどれもがいい!

 音楽は牛尾憲輔なのですが、作中で3人がそれぞれつくっているという設定を組んで、まったく違うテイストの曲を3曲用意している。

 ライブシーンは最後のみで、そのために序盤から終盤にかけてのアクセントいう点に関してはやや弱いのですが、その不満も最後のライブで解消されますね。

 

 ドラマに関してもやや弱い面があり、バンドを組む3人のうち、主人公のトツ子以外のきみとルイはそれぞれ家族との間の問題を抱えているのですが、きみが突然学校をやめた理由の説明もやや弱いと思いましたし、ルイは母親に対して音楽活動を隠そうとする理由も、医者になって自分の跡を継いでくれというプレッシャーがあるのはわかりますが、あの母親像からするとやや弱い気がしました。

 

 ただ、きみに関してはドラマの弱さをキャラデザの良さで補えている感じですね。

 本作にはシスター日吉子(声が新垣結衣)というほぼ完璧な美形なキャラが登場するのですが、きみはそれとはちょっと違った強さを持った美形で、主人公のトツ子が惹かれるのもわかるようなデザインになっています。そして、山田尚子監督+サイエンスSARUということで、アニメとしての動かし方もうまいですね。

 

 あと、この映画の問題というか蛇足はミスチルのEDですかね。主人公たちのやるバンド(しろねこ堂)がギターバンドならありだったのかもしれませんが、最初にも書いたように主人公たちのバンドが方向性の違ったものなので、あまり映画の世界にうまく接続できていないと思います。

 全体的にやや地味な話ではありますので、ミスチルの主題歌はプロデューサー的には一種の保険なのだと思いますが、ここまで劇中曲が良いのなら、EDもしろねこ堂で良かったと思います。

 


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