ミスチルのニューアルバムなんだけど何かが足りない気がする。
ここ最近のミスチルのアルバムが全て好きというわけではなくて、例えば「HOME」なんかはシングル曲以外そんな好きでもないアルバムです("ポケット カスタネット"を除く)。ただ、「HOME」は個人的に望んでいた方向性と違っていたアルバムで、次の「SUPERMARKET FANTASY」は近年のミスチルの傑作だったと思います。
一方、この「[(an imitation) blood orange]」は方向性は好きなんだけど何かエネルギーというか熱量というかが足りない感じ。
例えば、"Marshmallow day"は確かにいい曲なんですけど、「"エソラ"風の"youthful days"だな」とか思ってしまうし、つづく"End of the day"も好きなタイプの曲なんだけど、期待した盛り上がりに達せずに終わってしまう感じで何かが足りない。
まあ、"かぞえうた"あたりの上手さは相変わらずですが、個人的にはそんな好きなタイプではないので。
前作の「SENSE」も、イマイチな曲はあったんですけど、何と言っても"擬態”の高揚感といったらなかったですし、"ロザリータ"のキモさもいい感じでした(今作だとそういう怪しげなポジションを担うのは"過去と未来と交信する男"なんですけど"ロザリータ"ほどのインパクトはない)。
実は震災や原発事故受けて今度のアルバムは政治的な色の強いものになるんじゃないかとも思っていたんですが、そういう色は見事に抜いて来ましたね。
どちらかというと「みんなから期待されるミスチル像」をなぞってきた感じで、おそらく「癒し」の観点からするとこれが正しいのでしょう。実際、いろいろ文句は言いましたがラストの"祈り 〜 涙の軌道"はいい曲だと思いますし、震災後の「癒し」の歌としてはほぼ完璧な出来だと思います。
ただ、どこかでもうちょっと攻撃的な部分を期待していたのも事実で、そのせいか何だか「熱量」の足りない感じのアルバムに聴こえてしまいました。