『RE:cycle of the PENGUINDRUM [前編] 君の列車は生存戦略』

 昨年、放送から10周年を迎えたTVアニメ「輪るピングドラム」の劇場版。

 子ども姿で記憶をなくしている冠葉と晶馬が池袋のサンシャイン水族館で不思議な赤ちゃんペンギンに出会うところから映画はスタートします。TV版の最終回で冠葉と晶馬は子どもの姿になっていたので、TV版が終わったあとの話ということなのでしょう。

 ペンギンに導かれるように冠葉と晶馬はペンギンの帽子をかぶった桃果に出会い、そこで自分たちの過去が書かれた本を読むことになります。

 

 この導入部はもちろん新しく撮られた部分ですが、その後は基本的にはTV版の総集編となります。

 ただ、TV版を見たのが10年以上前に1度きりという状況なので、かなり忘れているんですよね。見ながら思い出していくわけですが、見ている先のストーリーというのは全然思い出せず、それもあって新鮮な気持ちで楽しめました。

 だから、ストーリー上のTV版との異同というものは正直なところよくわかりませんでした。

 

 もともと幾原邦彦の作品のストーリーというのは思い出しにくいもので、同じく10年以上前に1度だけ見た「魔法少女まどか☆マギカ」のストーリーはけっこう鮮明に覚えているのに、「輪るピングドラム」は覚えてない。でも、どちらが好きかと聞かれれば「ピングドラム」なんですよね。

 幾原作品は、ケレン味のあるシーンやキャラを必然性を持ってつないでいくというところに特徴があって、文字にしてみるとけっこう無理があるような話でも、映像にするとそこに必然性を見てしまうというところがあります。

 

 また、「一方的な想い」というのも幾原作品の特徴で、AがBを想っているが、BはCを想っている的な形がよく見られますが、個人的にはこのあたりが今回の劇場版でどのようになっていくかが注目ではないかと思います。

 今回の前編では、荻野目苹果(りんご)の話を丁寧に拾っていたと思います。とりあえずは苹果→多蕗(たぶき)という「一方的な想い」が中心になりますが、晶馬に対する隠された気持ちというのも丁寧に拾われていて、ひょっとしたら晶馬と苹果を使って「一方的な想い」ではない関係を後半で描くのかな?とも思いました。

 

 というわけで後編を見てみないと、この劇場版のたくらみと、それが成功したのかどうかはわからないですが、やはりキャラデザと音楽はいいですし、「生存戦略!」のシーンは大スクリーンになってもすべてを持っていくパワーがあります。

 満足しつつ、後編を待つという感じですね。