R.D.レイン『自己と他者』読了

 年末にブックオフで買ったR.D.レイン『自己と他者』を読み終わる。レインは初めて読んだんだけど、サルトルドストエフスキーからの引用、現象学的な記述など、やや時代を感じさせる面も。レインが参考にしたベイトソンの理論は古びた感じしないけど、レインの理論はやや古びた感じはある。ただ、いくつか面白かった部分を抜き書き。

 少なくとも一人の他者の世界の仲で、場所を閉めたいというのは、普遍的な人間的欲求であるように思われる。おそらく宗教における最大のなぐさめは、自分はひとりの大いなる他者の前に生きているという実感であろう。<中略>
 妄想を持つこうした人間をうわべだけでなくもっとよく知るようになれば、彼を苦しめているのは、彼の関係妄想というよりもむしろ、自分が誰に対しても全然重要性を持っていないのではないか、誰ひとりとして自分に関わりがないのではないかという悲痛な疑念なのだということがわかる場合が多い。<中略>
 自分自身を他者にとって意味あるものと経験しないがゆえに、彼は自分で他者の世界のなかに妄想的に意味ある場所をつくりあげるのである。(167〜169p)

「主体的に行動しなさい』というセリフの欺瞞について

 自発的であれと命じられた人間は、にせの安住しない境地におちいる。ジルは、自分に期待されていることをすることによって、従順であろうとする。だが彼女は、自分が真に欲していることを行わないために、不誠実だと非難される。もし彼女が、自分の真に欲していることを口にすれば、彼女は、ねじけているとかひねくれているとかいわれたり、自分自身の心を知らないといわれたりするのである。(197p)

 あと、103p〜のブライアンの話は、まるで小説のような症例です。
 R.D.レイン『自己と他者』

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