『害虫』再び

 DVDで『害虫』見た。この映画は劇場でも見てて、今回が2度目。この前、同じ塩田明彦の『カナリア』見たあと、無性に見たくなってたんだけど、やっぱこの映画はよい。明らかに『カナリア』よりもよいし、ここ最近の日本映画でもけっこう上位だと思う。
 このテーマの映画は「不発」っていう感じで、主人公の宮崎あおいの行動は常に不発に終わっちゃう。決定的な瞬間に足がすくんでしまうし、徹底的に虚無的にもなれないし、そして大事な人とは出会い損ねてしまう、そんな映画です。最初見たときもこんな印象を持ったけど、今回もそれは変わらず。ただ、最後のほうのトラックの運転手が猫を轢きそうになって「猫は走り抜けないと助からない。立ち止まったら死んでしまう」というセリフは忘れてた。けっこうこの映画を象徴しているようなセリフ。あと、今回見て蒼井優がよかった。すごく優等生の良い子を演じているんだけどハマリ役。すごく正しくて、蒼井優のいう「サッちゃんがかわいそうです」ってセリフ(サッちゃんは宮崎あおいの役名)はすごく正しいんだけど、でも、正しいこととよいことは違うんですよね。ちょっとかわいそうといえばかわいそうな役。
 撮り方については省略の具合と、セリフの少なさが非常によい。『カナリア』の悪いところはセリフが説明すぎるところだけど、この映画はほんと少ないセリフで状況を見せる。そして音楽の使い方。塩田明彦は『カナリア』のZAZEN BOYSといい、『月光の囁き』のラストで流れるスピッツの”運命の人”といい、音楽の使い方がうまいんだけど、この映画のNumber Girlの音楽は格好良すぎ。映画自体はよくわからなかったって人も、このNumber Girlが流れるシーンだけは印象に残ると思う。

晩ご飯は野菜炒めとキュウイ