『ウェブ進化論』を読んで

 梅田望夫の『ウェブ進化論』を読み終わる。これは面白い本。世の中「IT、IT」とは言うけど、日本の新聞とかでその未来図として語られるのは、電子マネーとか食品の履歴がわかるICタグとか子どもの位置がわかる携帯電話とか家の中の家電製品を携帯でコントロールする技術とか、便利といえば便利かもしれないけど別にどーでもいーようなものが大半を占めていたりするんだけど、この本の描く近未来像は刺激的だし、確かに新しい流れを感じさせるものがある。
 特にネットでは不特定多数無限大の人々をつなぐコストがほぼ無料になったことで、不特定多数の人々のちょっとした努力が大きな価値を生み出す

「(≒無限大)×(≒ゼロ)=something、あるいは失われていったはずの価値の集積」

という法則ができてくるというのは納得できるところだし、これからのネットの可能性を言い当てていると思う。
 また、マイクロソフトなどを「こちら側」、つまりリアルな社会のテクノロジーを追求する企業とし、それに対してグーグルを「あちら側」、つまりネットの中でテクノロジーを追求する企業と分類しているのも納得のいくところ。
 けっこううさんくさく思える「web2.0」という言葉も、この本を読むと、その形や可能性が見えてくるのではないでしょうか?
 
 それでこの本を読んで改めて考えてみると、自分の生活へのネットの浸透というのは思ったよりも大きくて、例えば、グーグルとかアマゾンとかの存在ってのは新聞社とかテレビ局よりもどう考えても大きくて、別に日本テレビやフジテレビが見れなくなってもそれほど困らないけど(NHK紅白歌合戦見たいからなくなると困る)、グーグルやアマゾンのない生活というのは考えがたいものがある。2ちゃんねると6チャンネル(TBS)とかでも、やっぱり2ちゃんねるのほうを選ぶと思いますしね。
 あと、ネットによる個人的な行動の変化としては、聴く音楽が変わってきた。一昨年の輸入盤CDの禁止騒ぎ以降、CDはほぼネットで買うようになったんだけど、そうなると今までは目につかなかったマイナーなものを次々と発掘することができて、さらにアマゾンのおすすめなどでさらなるマイナーなものを発見するというサイクルができて、聴く音楽もロッキン・オンで取り上げられるようなものから、そういう流れとは少しずれたところになってきた。http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20051226#p1で紹介した2005年のベストCDも1,2,4,6,9位と番外の1枚(Jedi Mind Tricks)はネットをやってなかったら、おそらく聴いてなかったと思う。
 これらのCDはべつに「失われていったはずの価値」ではないけど、ネットがなければ出会わなかったCDで、僕にとっては「失われていったはずの価値」であるのかもしれない。

 最後におまけとしての漠然とした思いなんだけど、結局グーグルやアマゾンをよく利用する理由としては「軽い」ってことも大きいと思う。アマゾンなんかは、他のHMVbk1なんかに比べるとあきらかに「軽い」。買う買わないは別にしてもとりあえずアマゾンで検索してみるってケースが多いですから。この本の著者の梅田望夫氏が「はてな」の経営に参加するってことなので「はてな」(特に人力検索)ももうちょっと「軽く」してほしいところです。

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる
梅田 望夫
4480062858


晩ご飯は豆乳鍋