ジーン・ウルフの<新しい太陽の書>シリーズの別巻にして完結編がこの本。このたび<新しい太陽の書>シリーズが小畑健のイラストの新装版になったのに合わせて刊行。
<新しい太陽の書>は前の版で読んでいて、それぞれの感想は以下に。
『拷問者の影』
http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20060504/p1
『調停者の鉤爪』
http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20060514
『警士の剣』
http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20060528
『独裁者の城塞』
http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20060614
今回はこの『新しい太陽のウールス』だけを読んだのですが、これから読む人は全四作を改めて読み直しておくといいです。
この完結編では、全4作では明かされなかった謎の多くが明かされているのですが、さすがに2年前の記憶では複雑な絡みをすべて理解するのは厳しい。
特に出だしは、宇宙船の中というSF的な状況で、今までの<新しい太陽の書>とまったく違う感じで始まるので、なかなかシリーズとの繋がりをつかめません。
ただ、中盤以降セヴェリアンがウールスに帰ってきてからは、前4作の記憶が次々と甦ってきて、シリーズのとの繋がりとウールスの秘密が浮かび上がってきます。
『独裁者の要塞』の感想にも書きましたけど、このシリーズの秘密は特殊な時間の流れ方にあって、今作ではそれが神話的なレベルで展開しています。
ただ、そのぶん展開が大味すぎるような気もするのも事実で、前半の宇宙船の中の話といい、前4作ほどの密度がないような気もします。
なんにせよ、<新しい太陽の書>シリーズをきちんと読んだ人がチャレンジすべき本でしょう。
(ちなみに前の版を持っているものとしては背表紙の色だけは合わせて欲しかった…)