作者のイスマイル・カダレはアルバニアの出身の世界的に知られた作家。
今度松籟社の<東欧文学の想像力>シリーズで、このカダレの『死せる軍隊の将軍』が出るというので、日本ですでに出版されているこの本を読んでみたのですが、これは正直いまいちかと。
Amazonに載っている小説の内容はこんな感じ。
時は中世、アルバニアのある村で、不可解な出来事が起こった。三年前に死んだはずの兄が、妹を遠い嫁ぎ先から連れ戻したというのだ。謎が謎を呼び、事件は次第に民衆の想像力のなかで伝説と化してゆく―。中世の感触が色濃い民間伝承をモチーフにして描く、ミステリアスな物語。
雰囲気的にはラテンアメリカ文学のようなおどろおどろしさみたいなものもあるのですが、文章も展開も意外とストレートなので、基本的に大きな驚きや高揚感のないままに終ってしまいますね。
舞台は中世であっても、カダレはそこに80年代のアルバニア、ソ連とも中国とも仲が悪くなり鎖国状態となっていくアルバニアの姿を重ねているわけですが、それが見えすぎるのも少し問題かと。
そして何といっても、この訳はフランス語からの重訳だということ。文体の味も失われているのかもしれません。
誰がドルンチナを連れ戻したか Ismail Kadare 平岡 敦 白水社 1994-01 by G-Tools |