『渇き』

 『オールドボーイ』、『親切なクムジャさん』のパク・チャヌク監督の作品。
 パク・チャヌクに関しては『サイボーグでも大丈夫』もけったいな映画ではあったけど、今作はさらにけったい。
 シリアスなのか?コメディーなのか?ホラーなのか? 
 それぞれの要素が入っているだけでなく、それぞれの文法が混在しているところがこの映画の最大の特徴。


 ストーリー的には、自らの仕事に限界を感じていた神父が奇病の研究の人体実験に参加。そこでただ一人生き残るもののヴァンパイアになってしまったいうもの。
 最初は「信仰と欲望」というような固いテーマをパク・チャヌクなりに見せるのかと思う。
 ところが、夜中に街を裸足で走り出す主人公の友人ガンウの妻のテジュに出会ってからは、ヴァンパイアらしからぬ主人公の血の吸い方も相まって話はコメディじみてくる。テジュを演じる女優キム・オクビィンのかわいさもあって、このあたりはラブコメ的に楽しめる部分もあります。
 が、さらに話はそこで終らずにガンウの殺害を計画するあたりから、今度はヒッチコックの引用みたいなものも出てきて、話はサイコホラーっぽくなってくる。
 特に後半の病気で動けなくなったガンウの母の怖さと存在感は圧倒的で、「ここから、パク・チャヌクお得意の復讐劇か?」みたいな感じになります。
 で、最近の韓国映画の特徴でもありますが、オチがついたと思ったところから話はさらに二転三転。しかも、ホラーなのか純愛なのか、それともやっぱりコメディーなのかよくわからない混乱を抱えたまま映画は終ります。


 正直、「なんじゃ、こりゃ?」的な部分もあるのですが、それでも個々のシーンの「強度」は圧倒的。
 映像的にも『オールドボーイ』にあったマンガ、ゲーム的な撮り方に、さらにハリウッドのアクション映画や古典的映画の撮り方までとり入れて、何でもありの状態。
 映画としての完成度は決して高くはないと思うのですが、すごいテンションのものを見せられたのは確か。