『パラサイト』

 カンヌのパルムドールを獲った話題作ですが、評判通り面白かったです。

 近年、『万引き家族』にしろ『家族を想うとき』にしろ、あるいは『ジョーカー』にしろ、格差社会を正面から取り上げた映画が多いですが、その中でもこの『パラサイト』のパンチ力はすごいですね。さすがポン・ジュノです。

 ポン・ジュノ+主演のソン・ガンホというと『グエムル』が思い起こされますが、『グエムル』と同じく今作も家族が活躍する映画です。ただし、カオスさが目立っていた印象のある『グエムル』に比べると、この『パラサイト』は、富裕層=高いところ、貧困層=低いところ、といった具合に一定の様式に従って撮られています。

 全体的に撮影が非常によく、特に舞台となる金持ちの家の撮り方は上手いです(広角で撮る画面からはちょっとパク・チャヌクっぽさも感じました)。

 

 ストーリーとしてはうだつが上がらず半地下の部屋で暮らしているソン・ガンホの一家が、長男が友人の伝手で金持ちの家の娘の家庭教師になったことから、一家でその家に家庭教師や運転手、お手伝いとして入り込んでいくというものです。

 このあたりは基本的にはコメディっぽくもあり、楽しんでみることができます。ただし、途中でそこから一歩深みに入っていくのがこの映画の見所です。

 

 同じ格差社会を描き、家族が犯罪的行為に手を染める『万引き家族』と比較すると、富裕層がきちんと描かれている点と、家族の絆が揺らいでいないという点が大きな違いです。

 特に後車に関しては、すでに家族が崩壊した後に構成された疑似家族を主役に据えた『万引き家族』と、落ちぶれて危ない橋を渡っても家族の絆は壊れていない『パラサイト』の違いは面白いと思います。これが日韓の違いなのか、それともポン・ジュノの家族に対するこだわりや信頼のせいなのかはわかりませんが、映画として大きな違いを生む要素なのは間違いないでしょう。

 

 最初にも述べたように、様式的に獲ってある分、前半はやや抑制された感じですが、だからこそラストの爆発力は圧巻で、素晴らしいインパクトを残します。高評価も納得の映画でした。