ようやく見てきましたが評判通りの面白さ!クリストファー・ノーランはすっかり勢いづいていますね。そして、今作はノーランのデビュー作である傑作『メメント』を思い起こさせる映画でもあります。
夢の中で相手に潜在意識を植え付けるという仕事をディカプリオが請け負うというのがこの映画のストーリーなのですが、その夢の中でまた夢を見て、さらにそこでも夢を見て…というようにかなり複雑な構成になっています。
ただ、夢の中に入りこんでさらにまたそこから夢を見て…という設定は、日本のアニメなんかにはよくあって、それこそ亡くなられた今敏監督の『パプリカ』なんかがそういう映画でした。
そんな中でこの『インセプション』が新しいのは、夢の世界の構造と関係性がはっきりと規定されている点。
夢の世界にはしっかりとしたレベルがあり、現実→夢世界1→夢世界2→夢世界3といった階層構造になっています。
そして、それぞれの世界では時間の進み方が違います。
実際、長い夢を見たと思って起きたら10分しかたってなかったというようなことがありますが、この映画ではそれがきちんとした法則として確立していて、現実の5分が夢では1時間ということになっています。
また、夢の世界は一つ前のレベルの世界の影響を受けます。例えば、夢世界1で大きな揺れがあると夢世界2でも世界が揺れ、夢世界1で乗っている車が横転すると夢世界2が世界ごとひっくり返ります。
この世界の関係性を使った夢世界の描き方がとにかくすごい!
夢世界1で車が落下し、その影響で夢世界2が無重力状態になった中での格闘シーンは、『マトリックス』以来のインパクトのあるアクションシーン。これはしびれます。
それ以外にも夢の設計者によって自在に変化する夢の世界を描いたCGも鮮烈。折り曲げられた街のイメージとかは新しいです。
ストーリー的にはディカプリオの請け負ったミッションとディカプリオの過去のトラウマがシンクロしながら進む形で、ある意味でありがちなストーリーではあるのですが、そこに夢の世界の複雑性を持ち込むことで、目が離せないストーリーになっている。
渡辺謙も、ちょっとしか出てこなかった『バットマン・ビギンズ』とは違い、出ずっぱりでなおかつ存在感を見せてます。
『アバター』も「おおっ」って感じはありましたが、個人的にはこっちのほうが好きですし、より強烈に感じました。