『カラフル』

 川崎で見ようと思ったら満席で、横浜のみなとみらいに移動してようやく見れた。そんな苦労もあったけど、映画は非常によかった!
 ただ、個人的にはこの映画の秘密をまだ捉えきれてないような気もして、少しもやもやが残ってたりもします。


 「Yahoo!映画」によるの解説とあらすじは次の通り。

解説:映画化もされた「DIVE!!」の原作者で、直木賞作家・森絵都のベストセラー小説をアニメーション化した感動大作。突然現れた天使により、自殺してしまった少年の体に“ホームステイ”することになった主人公の心の旅が展開する。監督は『クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』などの原恵一。思春期特有の揺れ動く気持ちと主人公が生きる勇気を見いだすまでの物語を、アニメーションならではの映像表現で描いた作品世界が見どころだ。

あらすじ: 突然現れて当選を告げる天使の計らいで、死んだはずの“ぼく”の魂は、自殺してしまった少年・真の体に“ホームステイ”をすることに。現世に戻る再挑戦のため、真としての生活を始めた“ぼく”は、やがて真が自ら死を選んだ理由を知る。そんな中、“ぼく”は現世に戻る再挑戦をすることの本当の意味を考え始めるが……。


ストーリーとしては最近の映画や漫画やドラマでよくある話。
 しかも真は学校ではいじめられていて、ひそかに気になっている女の子桑原ひろかが援交してて…とうように設定はものすごくベタ。
 脚本や撮り方によっては、ありがちでつまらないそれっぽい映画が、ぽんとできてしまう所です。
 ところが『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』などを手がけた原恵一はそれを見事に回避している。


 まず、特筆すべきは家族の描き方のうまさ。
 今まで仕事ばかりしてきて家出は存在感のなかった父親の愛情、そして専業主婦として家庭を支えようとしてきた母親のつらさを非常に丁寧に描いています。特に母親は麻生久美子が声をやっているのですが、これがとてもよいです。
 そしてバラバラだった家族が絆を取り戻すシーンも、必要以上にぐちゃぐちゃにせず、それでいて説得力のあるシーンに仕上げている。
 そしてもう一つは、主人公の真のドラマを、援交をやっているひろかとの交流を中心に描くのではなく、冴えない人物ながら人がよく、クラスで浮いている真とも付き合ってくれる早乙女との友情を中心に描いた点。
 この男の子同士の友情シーンもよくできていて、後半での真の「改心」に大きな説得力を与えています。


 というふうにドラマのつくりは非常にうまいわけですが、見終わって思ったのは「なんで実写でなくアニメなんだろう?」とうこと。
 この映画では背景に二子玉川近辺の実際の街並を使っていて、ほぼ実写そのままのようなシーンも多いです。また、天使?のプラプラという「非実在」的な存在もありますが、別に普通の役者にやらせても違和感のない役です。
 真と早乙女が玉電(東急玉川線)の跡地を散歩するシーンでの、写真に色がついて動き出すシーンなどは確かにアニメならではですが、この辺りも今はCGでなんとでもできるはずです。
 また、アニメと言えば「キャラ」が重要なわけですが、この映画の登場人物の「キャラ性」は薄いです。
 「キャラ」的な唯一のおもしろさは宮崎あおいがブスな女の子のアフレコをやっているところで、このへんはある種、アニメならではの面白さでしょう(ちなみに、真とひろかがラブホテルの前から走り出すシーンは、宮崎あおい主演の『害虫』を意識したシーンだと思う)。


 だから、この映画がアニメじゃなくてもいいような気がする。けれども、やっぱりアニメならではの実在からの距離感みたいなものが、映画やメッセージをわかりやすいものにしているような気もする。
 映画としては非常にオーソドックスで上質なドラマであると同時に、アニメとしては実はかなり変わった映画、そんな映画なんだと思います。


追記:ラストのブルーハーツの”青空”のカヴァー。宮崎あおいだったらより完璧だった、というかきっと心臓撃ち抜かれた。