クリストファー・プリースト『奇術師』読了

 クリストファー・プリースト『奇術師』を読了。
 これは面白い!あんまり面白いので最近出たプリーストの『双生児』も買ってしまいました。
 話は19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍したアルフレッド・ボーデンとルパート・エンジャという2人のライバル関係にあった奇術師の物語。ちょっとしたことから生涯をかけてお互いを意識し憎み合うようになった2人は瞬間移動のトリックをめぐって激しく火花を散らします。そしてそこには天才発明家のニコラ・テスラがからんで…というストーリー。
 そしてこの瞬間移動のトリックの謎をめぐって小説も進むのですが、効果的なのがその語りの構成。まずは、ボーデンの子孫のもとにエンジャの子孫からボーデンの自伝が届き、ボーデンの自伝が始まります。そこでまず、ボーデンとエンジャの因縁、そして2人の瞬間移動の芸、さらにはボーデンによって引き起こされた瞬間移動の実演中に起こったエンジャの悲劇が語られます。
 次のパートはルパート・エンジャの子孫のケイト・エンジャによって語られる彼女の幼少時代に起こった恐るべき出来事。
 最後のルパート・エンジャの日記によって、ルパート・エンジャの瞬間移動に隠された秘密、さらにはボーデンの瞬間移動のトリックの秘密が語られます。そしてルパート・エンジャの身に起こった恐るべき悲劇も…。
 この構成というのが一種のミステリー仕立てで、シャーロック・ホームズの長編に見られるような犯罪編と解決編に見られるような構成になっています。しかも、前半の語りに実は巧妙な仕掛けが隠されていて、最後のエンジャの日記を読みながら思わずまたボーデンの自伝を読み返してしまうこともたびたびです。2人の行う芸だけでなく語り自体がイリュージョンになっているとも言えます。
 しかも、最後の最後にはさらなる秘密も…。

 この本を読みはじめて初めて知りましたが、この『奇術師』は『プレステージ』という原題のタイトルで映画化され、6月に日本でも公開されます。監督は『メメント』や『バッドマン・ビギンズ』のクリストファー・ノーラン
 一昨日、『バベル』見た時に予告編をやっていましたが、クリストファー・ノーランならかなり期待できそう。

〈プラチナファンタジイ〉 奇術師
クリストファー・プリースト 古沢 嘉通
4150203571