椎名林檎、「三文ゴシップ」以来、5年半ぶりのソロ名義のアルバム。
NHKのワールドカップのテーマソング"NIPPON"では、その歌詞から「右傾化!」などと批判を浴びましたが、このアルバムではその"NIPPON”を含め"カーネーション"や"ありあまる富"などの以前に発表されたシングル曲を含む13曲が収録されています。
で、その「右傾化」批判なのですが、まあ確かに「NIPPON」の連呼や、「不意に接近している死の匂い」といったフレーズもあります。けれども、"NIPPON"の直後につづく"ありあまる富"は、「左傾化」していると言ってもいいプロレタリア的な歌なんで、椎名林檎が「右傾化」したという批判は当たらないでしょう。
むしろ、ここは右翼と左翼が実は近い位置にいるということをこの椎名林檎のアルバムが示しているのかもしれません。時代次閉塞の状況を肉体主義というべきもので突破する、その右と左に共通する感性がこのアルバム「日出処」にもあるんだと思います。
ただ、その椎名林檎の肉体的な存在感というものがやや落ちているように聞こえるのがこのアルバムのやや弱い点なのではないかと。
"赤道を越えたら"や"今"におけるホーンの使い方など、相変わらずセンスは光っているのですが、全体から溢れ出る過剰さのようなものが東京事変のアルバムに比べるとやや弱いような気もします。
もっとも東京事変のアルバムでも「娯楽」のようにいまいちピンとこないものもあったので、椎名林檎のパワーが落ちたというよりも、個人的な好みといまいち合わなかっただけかもしれません。
でも、以前の椎名林檎だったら"ありきたりな女"あたりももっとパワフルだったんじゃないかと感じていしまいます。
それでも、久々に聞いた"ありあまる富"はやはり良い。