The National/Sleep Well Beast

 The Nationalの7枚目のアルバム。The Nationalは3枚目の「Alligator」から聴いていますが、今までの彼らの総決算的な作品でもあり、10年代の新しいロックを切り拓く傑作。
 まず、とりあえず2曲目の"Day I Die"を聴いてほしいわけですが、複雑なドラムの鋭い切込みを入れていくギター、近年のロックで追求されていたウワモノにもなるようなドラムと装飾的なギターが高いレベルで誘導している文句なしの名曲だと思います。



 90年代後半はRadioheadをはじめとしてギターが前面に出たバンドが目立ちましたが、00年代に模索されたのがギターだけではなく、ドラムでも複雑なことをやってロックのマンネリ感を打破しようとしたバンドがいくつかあったと思います。
 例えば、...And You Will Know Us By The Trail Of DeadとかTwo GallantsとかMute Mathとか。そしてこのThe Nationalもそんなバンドの一つで、「Alligator」に収録されている"Mr. November"は複雑なドラムがサビからラストにかけてメロディとしても機能するという、この手の曲の中でも最高傑作と言ってもいいものだったと思います。
 その後、ややロックで新しいことは起きなかったような印象がありますが、10年代になってDaughterなどが非常に装飾的なギターを入れてきて面白いな、というのがそんなにちゃんとロックというジャンルを聞いていない自分のここ20年ほどの印象です。


 そんなここ20年ほどのロックの最進化系というか、弁証法的展開の上に出来上がったのが、この"Day I Die"ですね。今のところ今年のベストソングです。


 他にも、4曲目の"The System Only Dreams In Total Darkness"はあえてロックンロールリバイバル的ないかにもギターを入れており、これがThe Nationalの洗練された世界にアクセントをつけている。これもギターが光る作品ですね。
 6曲目の"Turtleneck"もあえてルーズな感じのギターを入れて、そのやや乱れた音にボーカルのマット・バーニンガーのやや低めで渋い声が乗っかって、ルーズながらもダークでどこかしら整った世界を作り上げている。
 8曲目の"I'll Still Destroy You"は、細かいドラミングが疾走感を生む曲で、ギターはやや後景に退いていますが、最後にせり出してくるストリングスもあって最後まで疾走感は落ちません。
 9曲目の"Guilty Party"はホーンを使った短いフレーズをバックに静かな疾走感が続く曲で、これまたかっこいいですね。
 個人的には間違いなく今年のベストアルバム候補ですし、今までも好きだったThe Nationalのアルバムの中でも最も完成度が高いのではないかと思っています。


SLEEP WELL BEAST [CD]
THE NATIONAL
B0716RP8ZH