森真一『日本はなぜ諍いの多い国になったのか』読了

 ロンドンではまたテロ騒ぎがあったみたいだけど、テロより怖いんじゃないかと思うのが、テロ対策法。
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050719-00000316-yom-int
の、

 特に新設される間接的扇動罪が問題視されている。同罪では「自爆テロ称賛」が違法とされており、内務省報道官は、「今回のテロについて、『これは素晴らしい出来事だ。実行者は殉教者』と発言すれば新法では罪になる」と説明している。しかし、大規模集会での発言に限るのか、私的な会合での発言も含むかなど、運用上の詳細は明らかになっていない。

って部分は、どう考えたって問題でしょ。イギリスといえば、フランスとかドイツと違って「自由の国」というイメージがあったけど、ブレアによってそれも今や昔.という感じですね。


 『自己コントロールの檻』が最高に面白かった森真一の著書が中公新書ラクレでついに出たってことで、さっそく読んだ。内容は現代文化論で、マナーの問題からケータイ、キャラ的人間、荒れる成人式、ひきこもり、と様々な現象を取り上げてます。
 「動物化」とか「シニシズム」とか最近よく使われる分析用語を使っていないのも特徴で、世間の一般的な見方を懐疑しながら、比較的昔からある社会学の知見を使って現代の風潮を分析しています。といっても、松本大洋の『青い春』の「不良と写真をめぐるあとがき」を引用するなど、著者の鋭いアンテナというのも感じさせます(ただ、「あとがき」の解釈は個人的に少し違うかな?と思います)。
 そして、この本の中で特筆すべきなのは第7章の”キレる「お客様」”の章。「『お客様』として生まれ、『お客様』として死ぬ」現代社会において、個人の欲望が「聖なる欲望」まで高められ、その「神聖な欲望」を傷つけられた「お客様」がキレる、という著者の仮説はなかなか説得力のあるものです。他の部分を削っても、この章をもっと膨らましてほしかった気もするけど、それは次の著作に期待。
 日本はなぜ諍いの多い国になったのか - 「マナー神経症」の時代
森 真一
4121501845